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日立産機システム 20年の歩み

第2章 グローバルトッププレーヤーへの挑戦
(2012年度〜2021年度)

2016年度〜2018年度 グローバルプレーヤーへの飛躍

日立産機システムは、2016年3月、「2018年中期経営計画」を策定、国内事業の強化とともに、海外事業におけるグローバルプレーヤーをめざした成長戦略の実行により、「売上高2,300億円、海外事業比率27%」を経営数値目標に掲げた。
2016年4月には、日立製作所における産業機器事業を総括するインダストリアルプロダクツビジネスユニットが発足した。この再編の一環として、日立製作所の受変電制御機器事業、大型空気圧縮機事業、日立パワーソリューションズの受変電制御機器事業を当社が承継した。
そして、2017年4月に、青木社長が会長に就き、荒谷豊専務取締役が第4代社長に就任した。同年7月には、日立製作所が米国の大手空気圧縮機メーカーSullair 社を買収したことで、当社と合わせ日立は世界3位の空気圧縮機メーカーとなった。

2016年度 「2018中期経営計画」がスタート

グローバル重点事業の拡大と国内事業の強化

日立産機システムは、2016年3月、「2018年中期経営計画」を策定した。「グローバルプレーヤーをめざした成長戦略の実行と国内事業の強化」を基本方針に掲げ、経営数値目標「売上高2,300億円、海外事業比率27%」に挑戦することにした。
海外事業では、マーケットの変化に迅速に対応し、さらなる事業の拡大をめざすこととし、販売・サービス体制、製品競争力強化を進め、各地域における事業統括機能の強化を図ることでグローバル展開を加速する。さらに、現地スタッフを含めて多様な人財を積極的に活用・育成し、事業に生かす方針とした。特に、グローバル重点事業拡大として、空気圧縮機とマーキング事業に力を注ぎ、海外事業比率を2015年度の32% から48% にまで高めることを目標とした。
国内事業では、省エネルギー、高効率化、設備・インフラ投資増加やエネルギー構造転換などの市場変化を着実に捉え、継続的な業績向上につなげていく。販売においては、地域戦略の強化、特約店との連携販売力の強化により、シェア・売り上げの拡大を図ることとした。中でも、IoT 保守サービスの立ち上げが重点テーマとなった。
なお、日立製作所などから当社への事業移管として、2016年4月1日付けで会社分割により、日立製作所の産業分野向け受変電制御機器事業の設計・製造・品質保証部門および日立パワーソリューションズの受変電制御機器に係る事業を承継し、勝田事業所が発足した。さらに、大型空気圧縮機事業の設計・製造・品質保証・販売・アフターサービス部門を当社が承継し、土浦事業所が発足した。


勝田事業所外観


土浦事業所外観(写真は本館)

2018中計における主要事業の取り組み方針


GravisUX シリーズ ツインノズルモデル

圧縮機事業では、海外は中国・アジア地域における売上拡大と欧米マーケットでの販売拡大に向け、サ・販・製一体の運営によりオイルフリースクロール圧縮機などの拡販、新規顧客開拓やパートナー企業との協業拡大などに重点を置いた。
国内は、トップシェア拡大のため、販売網や省エネ・リニューアル提案の強化とともに、保守メニューの展開、IoT を活用したサービス事業の拡大を推進する。また、日立製作所より事業移管を受けた大型空気圧縮機事業は、リソース・ノウハウを集約することで競争力を高め、国内でのさらなる拡大と、アジアを中心としたグローバル展開を加速することとしている。
マーキング事業では、新たな販売ルートの開拓、販売体制の強化とパートナー企業との協業により事業領域の拡大を図り、Gravis UXシリーズなどの戦略製品を拡販し、世界シェアの向上を図る。さらに、トータルマーキング事業構築のため、レーザマーカなどの製品ラインアップの拡充や、保守メニューの強化によるサービス事業拡大により、顧客ニーズに全方位で応えられる体制づくりを進める。
変圧器事業は、国内マーケットにおける省エネルギー・高効率化ニーズや、風力発電や太陽光発電などの新エネルギーへの需要増加を着実に取り込み、国内トップシェアの地位をさらに高めていく。海外では、中国における電網案件の受注拡大、民需市場に対応する品揃えの強化とともに、ミャンマーに設立した変圧器合弁会社 Hitachi Soe Electric & Machinery と密接に連携し、事業の拡大を図る。
ドライブ事業では、サーボ製品のラインアップの拡充やインバータの次期基幹機種投入などにより、IoT 需要を取り込んで事業の強化を図る。特に、PMモータの開発リソースを集中することにより、高付加価値分野・マーケットへの注力・転換を実現し、売上の拡大を図ることとした。
新たな成長領域として重点を置くのが、インターネット、クラウドに接続する情報通信技術を用いるIoT 関連事業である。当社のIoT コントローラ、ドライブ製品、通信端末や設備機器などの製品群により、省人・省エネルギー化といったニーズに応えていく。さらに、機器の納入にとどまらず保守・サービスをも取り込んで、顧客ニーズに全方位で応える体制を築く。
サービス事業についても、海外における新しい販売ルート開拓、販売体制の強化に連携して海外サービス事業の拡大を図る。国内では、メンテナンスパック化による新規顧客開拓や、クラウド監視サービスの提案など、顧客ニーズを踏まえた新しいサービスの創出・拡大を図り、事業移管された大型圧縮機サービスの取り込みも早期・着実に推進する。
そして、成長に向けた研究開発投資として、空気圧縮機センシング・予兆診断技術、新型レーザマーカ、PM モータ、IoT 活用に向けた新ドライブ制御などの新事業向け研究開発とともに、現業製品の次世代機開発にも力を入れることにした。
この他、引き続き、品質管理の強化、スマトラプロジェクトの加速、基本と正道の徹底を図り、フロント機能を強化したマーケット別の事業体制のもとで、お客さまとの「協創」を加速し、サービスとプロダクトの両輪で、価値あるイノベーションを創り出す。
また、事業移管された受変電・配電事業は、機器から制御盤まで統一した戦略のもと、製品ラインアップの拡充と経営の高効率化による事業基盤強化を図ることとした。

主要事業の取り組み


アモルファスモータ一体型オイルフリースクロール圧縮機(7.5kW機外観)

圧縮機では、2016年7月に給油式スクリュー圧縮機HISCREW NEXTUシリーズ22/37/55/75kW 屋外機を発売。8月にはオイルフリースクリュー圧縮機 DSP NEXTUシリーズ15 〜 55kW 単段機を発売した。2017年1月にもオイルフリースクリュー圧縮機 DSP NEXTUシリーズ132 〜 240kW 二段機を発売した。さらに、3月にはアモルファスモータ一体型オイルフリースクロール圧縮機を発売している。
インバータでは、2016年9月に高機能インバータSJシリーズ P1の販売を開始した。
マーキングでは、2016年12月にGravisUXシリーズにツインノズルモデルを追加し、発売した。
IoT 関連では、2016年4月にIoT 対応産業用コントローラ[PAC システム]HXシリーズを発売。7月にはIoT/M2M ソリューション対応 マルチ入出力端末装置CPMonitor、11月には日立モートルブロック用無線ユニットWTシリーズを発売している。
ソリューションサービスでは、10月にLCM サービス(設備の導入からアフターサービスまで、お客さまのニーズに沿った高付加価値の保守サービス:Life Cycle Management の略語)に空気圧縮機のクラウドによる監視サービス 現地改造型FitLive サービスを追加した。
その他製品では、2016年4月に高機能モートルブロック SuperF2シリーズ(容量2 〜 10t)、5月に輸出向け耐環境対応車両搭載器具を発売している。
9月には中小規模産業用20kW/30kW 蓄電システムを発売。10月にはPMモータ搭載形を追加したボルテックスブロワEシリーズを発売した。また、11月に両面型バイオクリーンベンチを、12月にはレーザ測位システムICHIDAS2-AX を発売した。

FitLiveシリーズのシステム構成図

売上 高2,000億円が目前に


2016年8月に新築オープンした四国支店のお披露目式記念写真(2016年11月)

経営その他では、2016年4月に関西支社サービス拠点の再編を実施した。
8月には四国支店にて新しく建設された事務所がオープンし、サービスと営業の同床化が実現。11月7日にお披露目式・披露パーティーを開催した。
当年度の表彰・受賞・受章では、2016年4月に勝田事業所が創意工夫功労者賞を受賞。11月には海老名事業所の空気圧縮機技術学校が厚生労働大臣より表彰を受けた。
2016年10月には『第54回技能五輪全国大会』(構造物鉄工)で勝田事業所の宍戸和選手が銅メダルを獲得した。
2016年度業績は、売上高1,950億円、海外事業比率は22.0% となった。

2017年度 荒谷新社長のもとでさらなる飛躍へ

Sullair 社の買収で、空気圧縮機シェアが世界3位に


第4代社長 荒谷豊

2017年4月、青木社長が会長に就き、荒谷豊専務取締役が第4代社長に就任した。
荒谷社長は青木前社長のもとで経営企画本部を立ち上げ、2015中計、2018中計をはじめ日立産機システムの経営戦略・事業戦略の立案にあたってきた。社長就任にあたって、荒谷社長は「2018中計の目標達成はもとより、2021年に向けた高い目標づくりにまい進していく。そのために、グローバルに通じる『商品力』『販売力』『組織力』の3つの“力”の強化に注力する」と抱負を語った。
事業展開では、2017年7月の日立製作所による米国の空気圧縮機メーカーSullair 社の買収が大きな注目を浴びた。このビッグプロジェクトは、青木会長が2016年から圧縮機のグローバル戦略として取り組んできたものであった。Sullair 社はルクセンブルクの産業機械メーカー アキュダイン社の子会社で、空気圧縮機で日立に次ぐ世界5位のシェアを有していた。しかし、Sullair社の業績は低迷しており、買収金額が約1,350億円もの巨額となるため、日立製作所内でも反対論が強かった。青木会長は圧縮機事業がグローバルトップになるために欠かせない案件であることを粘り強く訴求し、Sullair 社の全株式取得にこぎつけた。Sullair 社の買収により日立の空気圧縮機のシェアは世界3位となった。
以後、日立産機システムとSullair 社が協調しつつPMI(Post Merger Integration:企業買収後の統合プロセス)を推進し、「One HITACHI」として製品・販売両面でのシナジー創出を図ることでグローバルトップをめざしていった。

主要事業の取り組み


日立産機(蘇州)圧縮機有限公司合弁調印式

圧縮機事業では、2017年5月に、United OSD 社の中国方の株主が設立した投資会社との合弁で、日立産機(蘇州)圧縮機有限公司(HISC)を設立した。
同社は、中国市場向け圧縮機と周辺機器などの開発・製造を行っていく。
また、9月には清水事業所にて『日立スクリュー圧縮機出荷20万台達成記念式典』を開催した。
製品では、2017年4月にオイルフリースクリュー圧縮機AIR ZEUS SDSNEXTUシリーズを発売。9月にもクラウド監視サービスに標準対応したスクリュー式空気圧縮機NEXTVシリーズの販売を開始した。お客さまに新たな付加価値を創ることが認められ、日立Lumada Use Case の第1号に認定された。
変圧器事業では、2017年9月に日立SEM 社がミャンマー連邦共和国 電力・エネルギー省より配電用変圧器約5,400台の大口受注を獲得した。製品では、6月にメガソーラー向け多巻線変圧器の販売を開始している。
マーキングでは、2017年9月に産業用インクジェットプリンタ有機則非該当インクのラインアップを拡充した。
IoT 関連では、10月に産業用IoT 対応コントローラ HXシリーズ ハイブリッドモデルを発売し、11月にはマルチキャリア対応無線通信端末CPTrans-MEを発売した。
その他事業では、2017年8月に日立「再生医療用キャビネット」を発売し、9月にはホイストインバータ駆動シリーズSuperVシリーズ(4形)を発売した。
また、11月に小型高機能モートルブロック Lシリーズを発売した。


産業用I J プリンター有機則非該当インク


マルチキャリア対応無線通信端末CPTrans-ME 本体

海外事業比率が34% に達する


日立産機システム総合展2017 ポスター

2017年6月〜11月には、全国8 か所の拠点・会場において、『日立産機システム総合展2017』を開催。各地域のお客さまに産業IoT ソリューション、ドライブソリューション/ 自動化・省力化ソリューションおよび省エネソリューションなど、当社の総合力をご覧いただき、さらなる信頼関係の構築を図った。
表彰・受賞・受章では、2017年5月、JECA FAIR 2017 製品コンクールでハイブリッド形真空遮断器が日本電設工業協会奨励賞を受賞した。
また同年5月に多賀事業所の今泉正夫さん、11月には中条事業所の白井成三さんが『黄綬褒章』を受章。11月には、勝田事業所の清水頭孝悦さんが『現代の名工』を受賞し、『第55回技能五輪全国大会』(構造物鉄工)で勝田事業所の田口祐成選手が銀メダルを獲得した。
2017年度業績は、Sullair 社の事業が上乗せになったことで売上高2,402億円、海外事業比率は34.9% と、30% を上回ることができた。

2018年度 グローバルトッププレーヤーへの基盤づくり

マーケットの変化に対応する製品、サービスの提供

2018中計の最終年度を迎え、荒谷社長は「グローバルプレーヤーへの飛躍を実現し、2021年に向けての基盤づくりにおいて重要な年」と位置づけ、「サ・販・製一体となり、IoT 化や自動化・省人化などマーケットの変化に迅速に対応、かつニーズに的確に応える商品やサービス、ソリューションを通じてお客さま価値をタイムリーに提供する」ことを強調した。
新たな挑戦となるロボティクスソリューション事業体制づくりでは、2019年3月にロボットシステムインテグレーターの株式会社ケーイーシーの買収契約を結んだ。買収により同社のIoT コントローラ、位置通信機器などの技術・製品を取り込むことで、エッジコンピューティングへの対応を強化した。
また、受変電事業では、2018年4月1日付けで、日立製作所の電力部門から会社分割により33kV を超える特別高圧の産業分野向け受変電装置の販売・エンジニアリング部門の事業継承を受けた。これにより、多様化する受変電ニーズに対し、幅広いエンジニアリング・販売力を高めることができた。

主要事業の取り組み

圧縮機事業では、2019年3月に中国空気圧縮機新工場(HISC)の増築が完成し、操業を開始した。製品では、2018年10月にオイルフリースクリュー圧縮機 SDSNEXTVシリーズを発売、2019年1月に窒素ガス発生装置(N2 パック)NEXTVシリーズを発売している。
受変電機器事業では、2019年2月に日立製作所と会社分割による産業分野向け受変電設備事業の強化に係る吸収分割契約を結んだ。製品では、2019年1月にヒューズフリー遮断器・漏電遮断器のラインアップを一新している。
マーキング事業では、2018年7月に米国マーキング販売会社 Hitachi Industrial Equipment Marking Solutions Inc. とLabel House(正式社名: L.A.Supply Corporation)を統合、販売強化を図った。
IoT 製品では、2019年1月にAGV 向け運用支援機能搭載ICHIDAS-VGCを発売した。
その他製品では、2018年7月にインバータ搭載ボルテックスブロワユニットおよび日立エアシャワー 新フラッタージェットシリーズを発売。8月には、回生インバータホイストKシリーズを発売している。


AGV 向け運用支援機能搭載ICHIDAS-VGC


回生インバータホイストKシリーズ

売上高2,717億円、海外事業比率40% に


Lumada Center Southeast Asia にて決意表明する青木会長(左)、藤井常務(右)

2018年5月に習志野事業所のインバータ内作モジュール生産累計200万台を達成した。また、2018年9月、タイのアマタシティ・チョンブリ工業団地内にLumada Center Southeast Asia が開設された。
表彰・受賞・受章では、2018年4月にアモルファスモータ 一体型オイルフリースクロール圧縮機が第47回日本産業技術大賞『内閣総理大臣賞』を受賞した。11月には、勝田事業所の清水頭孝悦さんが『黄綬褒章』を受章した。
2018年度業績は、売上高2,717億円、海外事業比率は40.4% にまで高まった。

己を知り、正しい目標を設定し挑戦する


日立製作所 営業統括本部 上席主監
(第4代日立産機システム社長)
荒谷 豊

私は、2013年より経営企画本部長として「2015中計」の策定に携わった。「グローバルプレーヤーをめざした成長戦略」として、4重点事業(圧縮機、マーキング、変圧器、インバータ)に経営リソースを集中するとともに、循環型事業の拡大を掲げた。その狙いはグローバル市場で勝ち、アフターを含めたトータルサービスで企業価値を高めることにあった。
社長に就任した2017年には、Sullair社の買収により空気圧縮機で世界3位のポジションを得た。マーキングもM&Aを活用して欧・米・アジアを主体に展開しグローバルトップにチャレンジしてきた。
成長へのもうひとつの切り口は、IoTを活用したグリーン・デジタルソリューションである。省エネルギー、自動化・省人化、トレーサビリティ、セキュリティなどのニーズに対し、日立産機システムの強いプロダクトをベースとするトータルソリューションを提供することで新事業を創出できる。受変電・配電、ドライブ、ホイストなどの事業においてもソリューションビジネスへアプローチしていくことが成長・高収益化のカギとなる。
「2021中計」は新型コロナウイルス感染症の影響で停滞を余儀なくされたが、竹内社長のもとで業績が回復している。設立20周年を迎えて、原点回帰として日立産機システムの強みを見つめ直し、全社員が一致団結して「2024中計」の売上、営業利益、グローバル化を達成するとともに、更なる発展に向けての目標に挑戦していくことを期待している。