飲料メーカY社製造技術部
工場のデジタル化とトレーサビリティ強化をして、競争力の向上と品質管理の高度化を目指して動き出した、飲料メーカY社。まずは国内外の工場において、正確なトレーサビリティ情報を把握するためシステム全体の見直しを始めたが、いくつかの課題が見つかった。
従来、Y社の工場では、ロット管理によるトレーサビリティシステムを導入していました。
このシステムでは、製造現場に設置された産業用インクジェットプリンタ(IJP)を使って、製品ロットに”ロット番号””賞味期限””消費期限”を印字していました。
現場責任者の製造技術部主任のK氏は、現状のシステムに多くの懸念を抱えていました。
「今はロットごとの管理のため、個体の製造状態に対する正確な情報が把握できていません。検査工程で不具合が見つかった場合は、ロット単位で廃棄しています。何より怖いのは市場に出てから不良品が見つかった場合です。ロット番号が生産システムと連携していないため、原因究明や影響調査が遅れ、製造計画にも影響が及ぶこともあります」
特に海外の工場においては、食品メーカへの監視や規制が厳しくなってきており、製品の品質管理や工程管理について情報開示を要求されることも多くなっています。しかし、確認に手間と時間がかかり迅速に回答できないことも問題視されていました。
この点を解決するには、全社全ての工場をデータ連携させ、ERPとMESを導入し、DX化を進める必要があるため、新システムの設計・開発が始まりました。
ロット管理から個体管理にシフトすることで、廃棄量を限定することが可能になれば生産性の向上にもつながるのですが、ここで大きな問題に突き当たります。
これまでのY社のIJPは、導入予定のERP・MESと連携ができなかったのでした。
「新システムのプロジェクトは動き出していましたので、解決策を早急に探さなければいけない状況でしたが、なかなか対策案が決まりませんでした」(K氏)
ロット単位の管理システムは、不具合発生時に正確な原因把握ができない
不具合発生時はロット単位で廃棄しなければならないので無駄が多い
ERPとMESを導入しDX化を進めることになったが、現場のIJPでは対応できない