食品製造業X社生産技術部
有機溶剤中毒予防規則(有機則)により、対象となる有機溶剤が含まれるインクを使用する現場では局所排気設備や年2回の従業員への特殊健康診断、作業環境測定が必須となる。X社では安全性の観点から、マーキングシステムで使用しているインクについて、エタノールインクへの切り替えを早期に実施。作業環境の改善とともに、有機溶剤による中毒防止対策費用の大幅削減を果たした。
X社では有機則の対象とならないエタノールインクに切り替えてから「印字部分を擦ると薄くなってしまった」というクレームが入るようになりました。さらに、アルコール系消毒液で消毒した手や手袋で触れるとインクが溶け、消えてしまうというクレームも増え始めていたのです。
「出入り口にアルコール系消毒液を置いている店舗が増えています。その消毒液を使用した一般消費者が、店内に陳列された製品に触れただけで印字が消えてしまうのは、もはや致命的な欠陥と言えるのではないかと焦りを感じました」(生産技術部・K氏)
エタノールインクに乾きやすさや付着性に難があることも問題となりました。K氏が取り組んでいた生産ラインの高速化、増産体制の構築におけるボトルネックになってしまったのです。
「既存の生産ラインでは、マーキング以外の工程において、より高速化できる設備上の余力がありました。しかし、最終工程であるマーキングで詰まってしまうため、ラインスピードを上げることができなかったのです」(K氏)
エタノールインクを使い続けることに迷いが生じました。しかし、法務部からの意見があり、安全性の観点からも有機則の対象とならないインクを使い続けることは必須でした。
エタノールインクに切り替えてから「擦ると薄くなる」「アルコール消毒液が付着した手で触れると印字が消える」というクレームが増加
インクが乾きにくく付着性も悪いためラインスピードを上げられない