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日立産機システム 20年の歩み

第2章 グローバルトッププレーヤーへの挑戦
(2012年度〜2021年度)

2019年度〜2021年度 グローバルトッププレーヤーへの挑戦

2019年度を迎えて、日立産機システムは2021中期経営計画をまとめ、2021年度の売上高3,100億円、海外事業比率42%の目標を設定した。具体的な戦略では、「グローバルトッププレーヤーへの挑戦」を掲げ、成長と利益創出を担う空気圧縮機、マーキングの拡大とリカーリング(循環型)事業の強化、ソリューション・IoT 事業の強化、基盤事業の安定成長を柱とした。
この時期、世界経済は、米中の貿易経済摩擦や英国のEU離脱、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックなどにより大きく減速し、当社も厳しい経営環境にさらされることとなった。
2021年4月には、竹内康浩社長が就任し、グローバルトッププレーヤーをめざすさらなる挑戦を進めている。

2019年度 「2021中期経営計画」を策定

強いプロダクト・ソリューションを生む

日立産機システムは、2019年3月、「2021中期経営計画」を策定した。経営方針(めざすポジション/ ありたき姿)として、事業の社会・環境価値として「生産計画の最適化、品質向上の支援、環境負荷低減を進め技術革新の基盤づくりに貢献」を通じて「社会イノベーション事業に貢献する強いプロダクト・ソリューション」を生み出し、「グローバルトッププレーヤーへの挑戦」をめざすこととした。
数値目標としては、2021年度のめざすポジションとして「売上高3,100億円、海外事業比率42%」、ありたき姿として「売上高4,000億円、海外事業比率50%」を設定した。

2021中期経営計画の概要

具体的な戦略では、以下の3点を設定している。

「グローバル重点事業(空気圧縮機・マーキング)の拡大」
空気圧縮機、マーキングを成長と利益創出のエンジンとし、それぞれコネクテッド化によりリカーリング事業を強化する。
「ソリューション・IoT プロダクト事業強化」
ソリューション、位置・通信、ドライブ・オートメーションにおいて、成長に向けての新ビジネスを創出し、プロダクションからソリューションにわたり、IoT 事業を拡大する。
「基盤事業の安定成長」
受変電・配電、風水・クレーン関連では、国内高シェア事業の拡大などにより、成長投資の原資となるキャッシュを創出する。
さらに、注力分野として、IoT 化、デジタルソリューション、自動化・省力化(ロボティクスソリューション)、レンタル・リース(アセットレス化サービス)、省エネ化、高効率化、クリーン化、トレーサビリティ/ セキュリティを挙げている。

グローバル重点事業の拡大

「2021中計」において空気圧縮機、マーキングを「グローバル重点事業」としている。
圧縮機では、「2021年度 1,400億円超 世界2位への挑戦」「Sullair 事業拡大と日立シナジー最大化」を目標に、空気圧縮機事業の北米製造能力の強化(2019年10月にSullair 社のミシガンシティ工場の拡張による生産設備を増強)、Sullair 社との共同開発によるグローバルナンバーワン製品の投入などのシナジー創出で、オイルフリー圧縮機で世界トップをめざす。また、M&A を活用し欧州市場の本格参入を図り、インド・ミャンマーなどの新興国市場の開拓、中国の生産拠点最適化、Sullair 社を核とした豪州事業の拡大などを進めることとした。
製品では、2019年7月に新型ボルテックスブロワ 高圧2段圧縮タイプの発売を開始し、12月にも基本性能・耐環境性向上を図った新型空気圧縮機G シリーズの販売を開始した。
マーキングでは、ドイツ・英国など欧州での販売体制の強化、中国でのインクの現地生産体制構築、Sullair 社の販売網を活用した北米での事業拡大などグローバル事業体制の強化を進め、グローバルナンバーワン製品の創出、環境対応インクの開発、コネクテッド化によるサービス事業拡大などにより、世界3位の地位をめざす。
製品では、2019年5月にガラス・軟質フィルム向けインクジェットプリンタ用有機則非該当黒色インクを発売、同月にはインクジェットプリンタGravis UXシリーズ1・2段専用高速機を発売した。


新型ボルテックスブロワ 高風圧2段圧縮タイプ


ガラス・軟質フィルム向けインクジェットプリンタ用有機則非該当黒色インク


インクジェットプリンターGravis UXシリーズ1・2段専用高速機機

新たな成長へ、ソリューション・IoT プロダクト事業


IoT 対応産業用コントローラHXシリーズスタンドアロンキット

ソリューション事業では、総合ラインビルダーを目標に、デジタル・ロボティクスソリューション事業の拡大、ラインビルディング力の強化、M&A・協業を含めた規模拡大をテーマとした。
ロボティクス事業では、排気ガス触媒加工システム、搬送システム、触媒含浸システムなど多彩な納入実績をあげている。
IoT プロダクトでは、高付加価値分野への転換、新製品投入による売上拡大と収益力強化をテーマとし、位置・通信機器では、介護サービス、農業・建設機械、鉄道保守監視など高精度位置情報を求める新顧客の開拓を強化する。
IoT コントローラ事業では、エッジコンピューティング力を強化し、日立製作所との連携を進めて新規需要を創出する。
ドライブ事業では、高付加価値のPM モータの拡販、ビルトイン型の開発、センシング・予兆診断などの優位技術の開発・投入により、グローバル機械メーカーの開拓を進めていく。
製品では、2019年5月に、IoT 対応産業用コントローラHXシリーズスタンドアロンキットを発売した。

安定成長をめざす基盤事業

受変電・配電では、日立製作所より事業分割を受けた特別高圧をはじめ産業向け受変電設備事業の一体運営の強化を図り、変圧器では、アモルファス変圧器やハイブリッドVCB の拡大により国内トップシェア30%をめざす。
大口案件では、2019年11月に日立SEM 社がミャンマーの電力・エネルギー省より配電用変圧器約5,600台を受注した。製品では、2019年7月に低圧絶縁監視システムの保守点検を容易にした多回路品の発売を開始し、また、日立環境調和型変圧器Super アモルファスZero「奏(かなで)」を発売した。11月には高圧単要素ディジタルリレーHDRシリーズのラインアップを拡充した。
クレーン・風水事業では、ホイスト・クレーン事業、クリーンエア事業で国内トップシェアをめざし、風水力(ポンプ)事業ではIoT 化による更新需要獲得、アフター事業の拡大にあたる。製品では、2019年8月に耐食性に優れたステンレス筐体を採用したエアシャワーPCJ-S88JSM4の販売を開始した。10月にはWHO ガイドラインに適したバイオハザード対策用クラスUキャビネット 新型SCVシリーズを販売した。


日立環境調和型変圧器Super アモルファスZero「奏」


バイオハザード対策用クラスUキャビネット新型SCVシリーズ

Sullair 社業績付加で、売上高、海外事業比率が順調に推移

2019年度は、プロダクト事業に加えて、サービス事業の拡大を図り、とりわけデジタルソリューション事業の強化・拡大に注力した。2019年4月には、株式会社ケーイーシーが当社グループに加わり、ロボティクスソリューション事業を一体的に展開する体制づくりを進めた。また、日立製作所からの受変電事業移管による特高〜低圧一体運営体制の確立にも力を注いだ。
当年度の表彰・受賞・受章では、あらゆるデータ収集を可能としてスマートファクトリー化を実現する産業用コントローラの開発と実用化で『第67回電気科学技術奨励賞』を受賞した。
2019年度業績は、Sullair 社の業績が加わったことで売上高2,769億円となった。海外事業比率もSullair 社分が加わり37.6% となった。

2020年度 IoT 時代のイノベーションパートナー

新型コロナウイルス感染症まん延の中で

2020年は、新型コロナウイルス感染症が世界的にまん延し、グローバル経済・社会において多大な影響を及ぼした。
当社は、めざす姿として「I oT 時代のイノベーションパートナー」への進化を新たに掲げ、基本方針として事業体制強化による重点事業の拡大、グローバル、ソリューション、選択と集中による成長分野への重点投資、固定費対策と事業構造改革断行による収益改善に取り組んだ。

トップレベルに挑戦するグローバル重点事業

空気圧縮機では、重点施策として、北米市場での定置式、移動式のシェアアップ、北米専用オイルフリー機投入、直販体制の強化(販売店買収で5社体制に)を掲げた。中国市場では新省エネ規格(GB)対応、サービス事業拡大、生産拠点の最適化を推進した。
国内市場では、次世代機投入によるシェアアップ、クラウド監視によるリカーリング事業の強化などによる売上高拡大をめざした。
さらに、Sullair 事業の拡大に向けて新製品投入によるシェアアップを図り、2020年1月に発売したオイルフリーポータブル機、同4月発売の北米専用オイルフリー機の拡販を進めた。2021年2月よりミシガンシティ工場拡張による内製化を開始した。
中国市場では、2020年4月より新省エネ規格(GB)対応品を投入し、大手顧客へのアプローチを強化した。一方でレンタル、オイル&ガス、食品・薬品などの新規顧客獲得に向けて、代理店拡充とアフター事業の強化を進めた。
なお、2020年10月に新生相模事業所が自主運営を開始し、3月には海老名事業所も統合された。2021年1月にSullair 台湾がTaiwan Hitachi Asia Pacific Co., Ltd. へ統合された。また、Shenzhen Sullair Asia Industrial Co. Ltd(SSAI)の生産を Suzhou Sullair Air Equipment Co., Ltd(. SSAE)に集約し、生産効率を向上した。
マーキング事業では、世界2位への挑戦をテーマに、事業体制の強化による規模拡大、グローバルナンバーワン製品の創出、インク製品の強化、コネクテッド化によるサービス事業拡大、マーキングをベースとしたソリューション強化などに多面的に取り組んだ。

コネクテッド化を軸とするソリューション事業


IoT 対応産業用コントローラHXシリーズハイブリッドモデルU

ロボティクスソリューションでは、体制強化によるOT ソリューション事業の拡大、当社のプロダクト顧客へのアプローチと深耕に取り組んだ。さらに日立製作所の産業部門との連携を深め、トータルシームレスソリューション事業に貢献する取り組みを進めた。
製品では、2020年4月にIoT 対応産業用コントローラHXシリーズ ハイブリッドモデルUの販売を開始した。
位置・通信機器では、高精度位置情報により省人化などを図る顧客の掘り起こし、産業機器のコネクテッド化需要の取り込みなどを精力的に進めた。

収益力向上をめざす基盤事業


Bluetooth 対応パッケージベビコン

ポートフォリオ変革と構造改革による収益力強化をテーマに、高付加価値製品としてアモルファス(変圧器、ドライブ)、予兆診断(ドライブ)、IoT 化(ホイスト、ポンプ)、クリーン(エアシャワー)、特高受変電などに注力した。
製品では、2020年4月に低圧気中遮断器(ACB)AKシリーズを発売し、同月Bluetooth 対応パッケージベビコンを販売開始している。さらに7月には72/84kV Hy-VCB 搭載 ガス絶縁開閉装置を発売、9月にもエステル油を採用した新型環境調和型配電用変圧器「奏」シリーズの販売を開始した。2021年3月にはBluetooth 対応オイルフリースクロール圧縮機を発売した。

世界経済の停滞で業績後退


油冷式スクリュー空気圧縮機Gシリーズ(22/37kW)

表彰・受賞・受章では、2020年11月に油冷式スクリュー空気圧縮機 Gシリーズ(22/37kW)が、一般社団法人日本産業機械工業会から2020年度の優秀製品として表彰された。
2020年度業績は、新型コロナウイルス感染症のまん延、米中の摩擦拡大などにより厳しい経営を迫られ、売上高は2,431億円となった。海外事業比率も35.2% に後退した。

2021年度 竹内体制で2021中計の仕上げへ

第5代竹内社長が就任


第5代社長 竹内康浩

2021年4月、第5代社長に竹内康浩が就任した。
竹内社長は「設立20周年に向けて、新型コロナウイルス感染症の影響を乗り切って、再び成長軌道に戻すための施策を粘り強く実行し、新たな成長戦略を打ち立てる年にしたい」と抱負を語った。
そして、現下の世界経済の変化を踏まえ、「めざす姿/ ありたき姿」を再設定した。基本方針としては、顧客ニーズの変化に対応する事業価値の提供、グローバルリーダー2事業(空気圧縮機、マーキング)への戦略投資集中、高付加価値ソリューション事業の育成、次期グローバルリーダービジネスの創出、ユーティリティ、「トータルシームレスソリューション」への取り組みを設定している。

トップポジションをめざすグローバルリーダー事業

グローバルリーダー事業では、空気圧縮機において日立とSullair 社事業のさらなる統合と最適化を図り、クリーンエア製品でのグローバルNo.1、アフターマーケット事業の拡大を事業戦略に掲げた。マーキング事業においては、CIJ(Continuous Ink Jet printer)製品でのグローバルシェアトップをめざすとともに、ソリューション/サービス事業の拡大を基本方針に掲げた。そして、リカーリングビジネスの一環としてスマートメンテナンスによるアフター比率50%、サブスク事業の拡大を期した。
空気圧縮機では、日立産機マレーシア社で生産されていたスクリュー圧縮機を日立産機(蘇州)圧縮機有限公司へ移管した。
マーキングの販売面では、2021年4月に北米における販売強化として、米国マーキング販売会社Hitachi Industrial Equipment Marking Solutions Inc. と日立アメリカ社の産業機器部門を統合し、Hitachi Industrial Equipment & Solutions America, LLC を設立した。

成長・飛躍するソリューション事業


産業用無線ルータ「CPTrans」シリーズ

今後の成長を担うソリューション事業では、ロボティクス/デジタル事業の拡大と、「位置」を起点とした高付加価値ソリューションの提供を掲げた。
ロボティクスソリューションについては、日立製作所の産業・流通ビジネスユニットおよびJR オートメーション社と日立産機グループとの一体運営をより強化していく。そのうえで、M&A やアライアンスなども積極的に活用し、5G 移行に対応しつつ高精度位置・通信事業の強化拡大を図っていく。
具体的な取り組みでは、2021年4月にクラウド監視データを活用して製造分野の新たな価値を創出する「FitLive カスタマーサクセスセンタ」を開設、顧客の稼働データの分析を通じて産業機器の最適運用をサポートしていく。
2022年3月には産業用無線ルータCPTransシリーズのラインアップの強化を図った。
大口受注では、2022年3月に岩手県企業局の四十四田発電所(水力)において、保守・点検業務のスマート化実証の第1 フェーズが完了、今後、デジタル技術の活用により保守・点検業務を適正なタイミングで実施することで業務の効率化と高度化に大きな貢献を果たすことになる。

IoT で高付加価値化を期す基盤事業


中条事業所 新棟外観

受配電・配電事業では、エアクリーナなどを成長分野として、高付加価値製品への転換、コネクテッド化、アモルファス化、予兆診断などにより環境調和・省エネルギーへの貢献にも積極的に取り組んでいくことにしている。
2022年3月には、脱炭素社会の実現に向けて配電用変圧器の製造能力を強化するため、中条事業所に新棟を建設し生産設備を増強した。
製品では、2021年5月に塵埃(じんあい)除去率80%を実現した新型エアシャワーPCJ-H88JJM4 の販売を開始した。9月には高圧真空遮断器 新型Cシリーズの販売を開始した。さらに、同月、超高効率アモルファス配電用変圧器シリーズにおいて、高圧用と植物エステル油を採用した特別高圧用の2 シリーズをラインアップした。

設立20周年を迎えて

2021年12月には、本社をAKS ビルから秋葉原ファーストビル(AO ビル)に移転した。移転を機に、同ビルに本拠を置く日立製作所インダストリーセクターとの一体運営によりシナジー効果を発揮するとともに、より付加価値の高いプロダクト、ソリューション・サービスの提供を図ることとした。
2021年度業績は、世界経済の回復基調を捉えて着実に実績を積み重ね、売上高2,727億円、海外事業比率39.3% と、いずれも前年度を上回った。
2021中計の成果として、Sullair 社を中心にグローバル化を展開したことでグローバル比率が40%にまで増加、プロダクトのコネクテッド化の推進によりリカーリングビジネスモデルの強化を実現できた。
一方で、新型コロナウイルス感染症による世界経済の冷え込みが続いており、半導体・電子部品、鋼材などの原材料の高騰と品不足などサプライチェーンの混乱による成長踊り場にある状況の打破が課題となっている。
日立産機システムは、設立20周年を迎えて、環境対応、デジタル化、働き方改革に対応する自動化、安心・安全対応などのニーズを先駆的に取り込むとともに、リカーリング事業の強化、継続的な構造改革による高収益構造の確立をめざしていく。
また、2022年度より、企業文化をよりオープンで前向きに変革するためのカルチャー・トランスフォーメーションプロジェクト「Working Together」に取り組んでいる。「People First」「Work Smarter」「Innovation by Diversity」「Go Green」をキーワードに、日立産機システムのよい文化を受け継ぎながら、従業員が誇りを持てる、より良い会社に変革し、従業員のエンゲージメントを高め、サステナブルな成長をめざしていく。
2022年4月には、ドイツのレーザ装置メーカーPhoton Energy社を買収。印字のための先進的レーザ技術を獲得し、ポートフォリオを強化した。7月には、マーキング事業の強化に向け米国Telesis Technologies社を買収し、製品ポートフォリオを拡充するとともに、北米事業の拡大とリカーリング事業強化を図っている。
さらに、2023年4月、米国で空気圧縮機事業を手がけるSullair社がHitachi Global Air Power US, LLCに商号変更した。この変更により、日立の空気圧縮機事業のグローバルな一体運営をさらに強化し、成長を加速していく。


現在の本社(AOビル)


「Working Together」ポスター