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Hitachi

情報誌VoltAge21

躍進する企業を訪ねて vol.140 株式会社イズラシ

第三工場には37kWタイプの日立製圧縮機が2台設置。IoTクラウド監視機能が導入されている(左)
戻り止めナット製品の一部。色つきのものは純チタン製(右)
第三工場には37kWタイプの日立製圧縮機が2台設置。IoTクラウド監視機能が導入されている(左)
戻り止めナット製品の一部。色つきのものは純チタン製(右)

株式会社イズラシ

小さな締結パーツに無限の可能性を求めて。
品質と提案力で信頼される、戻り止めナットの専門メーカー。

クルマを支えるサスペンションやシャフト、ブレーキなどの足回り部品には、
機能や大きさもさまざまな締結部品が使われ、
高い走行性能や安全性に貢献しています。
株式会社イズラシは、製品の出荷・輸送面ではやや不利な地に創業しながらも、
品質と機動力に優れたナット専門メーカーとして業績を伸ばし続けてきました。
今回は、同社が躍進するきっかけとなった出来事や、
自らを“雑草集団”と語る自由闊達な企業風土、
そして同社に採用されている
日立産機システムの製品とサービスをご紹介します。

大成ラミック株式会社

株式会社イズラシ

代表取締役社長 :
堤親朗
創業 :
1939(昭和14)年
所在地 :
本社/静岡県沼津市大岡4044-29
従業員数 :
123名(2018年1月現在)
事業内容 :
オールメタルナット、ナイロンナット、特殊ナット、プッシュ、
パイプ、カラーなどの製造販売
◎公式サイト http://www.izurashi.co.jp

地の不利、製品の不具合を乗り越えて築いた、
品質で信頼される専門メーカーのポジション

 悪天候で貨物船が出ず、自らつくったボルトを 背負子しょいこに乗せて、足場の悪い山道を運んだこともあった──。静岡県伊豆半島の西部・ 戸田へだに、1939(昭和14)年創業した株式会社イズラシ。「創業時から戦後にかけては道路もあまり整備されておらず、人力で修善寺まで運搬し、そこからトラックで陸送していたそうです」と、代表取締役社長の堤親朗様は振り返ります。

 事業展開の上でデメリットと考えていた立地でしたが、業界大手の株式会社フセラシ様の嶋田社長(当時)からいただいた一言が、その後の同社の進むべき道筋を決めてくれました。それは「地の利に恵まれていないからこそ、付加価値の高い戻り止めナットの専門会社として進むべき」、というものでした。このアドバイスが縁となり、1963(昭和38)年には株式会社フセラシ様との業務提携という転換点へとつながり、まさに第二の創業期を迎えたといいます。

株式会社イズラシ 代表取締役社長  堤親朗 様
株式会社イズラシ 代表取締役社長 堤親朗 様

 戻り止めナットとは、内側にナイロンリングを入れた「緩まないナット」。同社ではその9割がクルマの足回り用に生産されています。その生産拠点として「第一工場」に続いて、「第二工場」「第三工場」「沼津工場」が順次新設され、2012(平成24年)には本社を移転。2019年には「伊豆の国工場」の竣工を控えるなど、順調な成長ぶりを見せています。

 同社のモノづくりの基本は「品質」ですが、特に品質に注力するようになったきっかけは23年前に発生したナットが締め付け後に割れるという不具合です。「問題を徹底して解析し、会社と品質をもう一度見直そう」と全社員が一丸となって品質体系を再構築しました。

 「不具合は表に出すことが大事です。問題をクローズアップできる機会なのに、隠したら、得られるはずの知見が水平展開できず、また別の不具合を起こしてしまう。当社は雑草集団です。失敗からとことん学ぶ強さがあると思います」と堤社長。「お客さまから何か連絡があったら、まず駆けつけることがモットー。会社はお客さまが育ててくれるからです」と、熱く企業風土と経営姿勢を語られました。

クイックレスポンスと
仕様書を読み解く提案力を強みに

株式会社イズラシ
常務取締役  河上浩三 様
株式会社イズラシ
常務取締役 河上浩三 様

 ナット専門メーカーである同社の強みは、戻り止めナットに特化したことで蓄積した技術力と、冷間圧造機(ホーマー)の導入による高い生産力です。力を加えて形をつくる冷間圧造はスピードが速く、材料のロスも出ません。熱加工による歪みも発生しないので、精度・品質が高く、大量生産が可能です。

 さらにお客さまから仕様書をいただいてから形にするまでのレスポンスの速さも、同社の大きな強みだといいます。常務取締役の河上浩三様は、「社員に強調しているのは、いただいた図面通りにつくるのではなく、開発段階において検討を重ね、ムダな部分や過剰な品質をできるだけ除いて、こうしたらもっとコストを下げることができます、もっと納期が短縮できます、と当社の強みを活かしたご提案をすることです」と語られます。こうした努力が実って、国内有数の圧造品メーカーとして“QCDD”(品質、コスト、納期、開発力)のバランスのとれた工場経営のあり方が定まってきました。

コーキングマシン。10tのプレスをかけて戻り止め機能を付加する
コーキングマシン。10tのプレスをかけて戻り止め機能を付加する

画像検査装置による
徹底した品質管理
画像検査装置による
徹底した品質管理

高い信頼を得ている戻り止めナット
高い信頼を得ている戻り止めナット

第三工場は主にNC工程を担う
第三工場は主にNC工程を担う

沼津工場は検査や梱包、
出荷などを担う
沼津工場は検査や梱包、
出荷などを担う

 さらに河上様がモノづくり現場で大切にしているのが、整理・整頓・清掃・清潔・しつけ・作法の「6S」。「この6Sのレベルが、品質レベルや生産効率レベルと比例していると考えています。“生産現場のスタッフも営業の一員”と考え、お客さまが現場をご覧になって『この工場で、このスタッフたちに製品をつくってもらえるなら安心だ』という気持ちを持ち帰っていただくことをめざしています」と河上様。その精神は、社長自らが来客用トイレを清掃される姿にも表れています。

 クリーンで明るいモノづくり現場は、第一工場、第二工場、第三工場、沼津工場それぞれが独自の工程を担うシステムによって構築されています。第一工場では主に「冷間圧造加工」を行い、第二工場では「ねじ立て」、第三工場で「NC加工」を、沼津工場では「S形・N形プレス」「ナイロン樹脂成形」「潤滑油塗布」「検査」「梱包」などを行い、年間約5億個の製品を出荷しています。お客さまである自動車部品メーカーに安全、安心のナットを提供しているこれらの工場では、生産ラインで稼働するほとんどの加工機械がエアーを使うことから、安定稼働で定評のある日立産機システム製の空気圧縮機をご採用いただいています。

地域社会と社員を大切にしながら、
新たな分野への挑戦を

株式会社イズラシ
製造部 製造四課
参与  小林静男 様(右)
主査  神崎一徳 様(左)
株式会社イズラシ
製造部 製造四課
参与 小林静男 様(右)
主査 神崎一徳 様(左)

 近年も、同社では空気圧縮機をいち早く最新機種にリプレイスいただきました。

 「これまでも特約店の静岡日立さんと日立ブランドへの信頼がありましたので、静岡日立さんからのご提案はいつも前向きに検討しています。空気圧縮機についてはエアーを使うことはお金を使うこととイコールだと考え、空気圧縮機の使い方を見極め、ムダを極力なくすよう社員にも言っています」と日頃の姿勢を語る河上様。製造部 製造四課 主査の神崎一徳様は、「電磁弁制御やバルブ制御などを検討するなど、皆でいろいろと取り組み、現場での効率化を進めています」と取り組みをご紹介されました。

 またリプレイスと同時に、空気圧縮機の『FitLive®メンテパック』をご契約いただきました。これはIoTクラウド監視機能付きの複数年保守契約。24時間365日、リアルタイムに稼動状況を遠隔監視できるので、トラブルの早期発見・未然防止に貢献します。これでイズラシ様、静岡日立さん、当社が同じ稼働情報を共有することで、従来にも増して迅速に対応できるようになりました。「メンテナンスや日常の状態監視はとても大切ですが、日立さんの取り組みには安心感を持っています」と、製造部 製造四課 参与の小林静男様も遠隔状態監視機能にご満足いただいているようです。

第二工場に設置された日立製圧縮機にも
IoTクラウド監視機能が導入されている
第二工場に設置された日立製圧縮機にも
IoTクラウド監視機能が導入されている

沼津工場には55kWタイプ
日立製空気圧縮機を2台設置
沼津工場には55kWタイプ
日立製空気圧縮機を2台設置

IoTクラウド監視機能の確認画面で
全拠点の圧縮機を管理
IoTクラウド監視機能の確認画面で
全拠点の圧縮機を管理

 同社の特徴には、事業活動に加えて社会貢献活動にも力を注いでいることがあります。沼津工場では周辺に芝桜を植え道路の清掃を行い、環境美化に努めています。また研究機関とタイアップしたトレーニング施設『アイシック健身塾』を本社敷地内に設け、地域住民の健康増進や社員の福利厚生にも寄与。さらに実業団のバスケットボール・チーム『イズラシ・トマホークス』を運営するなど、スポーツ振興にも貢献しています。

 「今後は、社員同士が遠慮なく意見を言えるような大家族のような会社にしたいし、社員が入社して良かったと思えるようにしたいですね」と堤社長。「開発面では新素材への挑戦を推進し、樹脂やチタン化の研究を進めていきたいと思います。また複合的な機能を一つの工程で実現し、高付加価値な製品づくりも進めていきます。キーワードは提供価値を最大化するためのVAです」との意欲的なお言葉をいただきました。日立産機システムでは同社の今後の発展にお役に立てるよう、さらに製品とサービスを磨いてまいります。

お客さまのベストパートナーをめざして
日立産機システム 製品関係者 インタビュー