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情報誌VoltAge21

躍進する企業を訪ねて vol.135 株式会社鴻池組 技術研究所

日立SuperアモルファスZero MS(モールド変圧器)を5台設置(左) 本館のZEB化改修計画(右上) 本館外観(右下)
日立SuperアモルファスZero MS(モールド変圧器)を5台設置(左) 本館のZEB化改修計画(右上) 本館外観(右下)

株式会社鴻池組 技術研究所

エネルギーを「減らす」「上手に使う」「創る」──
技術研究所のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)改修への挑戦。

株式会社鴻池組は、数多くの建設プロジェクトとともに、
約150年にわたってわが国の建設業界を支えてきました。
同社の研究開発を担う技術研究所は、先駆的な技術を活用し、
耐震・制震・免震、省エネ、土壌汚染除去、文化財保存など多分野に貢献。
2017年1月には、環境・エネルギー問題への現実的な答えを提案するために、
高効率の省エネ建築物「ZEB」化改修を実現しました。
今回は、多種多彩な省エネの先進技術を導入した技術研究所と、
ZEB化に貢献した日立産機システム製の変圧器をご紹介します。

株式会社鴻池組

株式会社鴻池組

代表取締役社長 :
蔦田守弘
創業 :
1871(明治4)年
所在地 :
技術研究所/茨城県つくば市桜1-20-1
本社/大阪市中央区北久宝寺町3-6-1
従業員数 :
1,600名
事業内容 :
建設工事の企画・測量・設計・監理・請負・コンサルティング、
不動産の売買貸借・仲介・所有管理 など
◎公式サイト http://www.konoike.co.jp

構造の研究を強みに、安全・安心、
省エネを探究する、先進の「技術研究所」

 大阪市に拠点を置き、日本の建設業界の発展に貢献してきた株式会社鴻池組。1871年創業の歴史と実績を持ち、2021年には150周年を迎えます。

 同社において、クライアントからの要望に応えるために、技術的な課題を合理的に解決することを目的として、1954年に設置されたのが本社研究室、のちの技術研究所です。1997年には、より高度な研究を進めるために、先進の実験設備を持つ施設を茨城県つくば市に新築し、移転しました。

 関西で、初めて高さ60mを超える鉄筋コンクリート(RC)造の超高層建築物を手掛けた同社。その強みは、構造と材料分野における技術力にあります。RC造超高層に必要な高強度コンクリートを1980年代から先駆的に開発してきました。また、鋼管の中にコンクリートを充てんするCFT(Concrete Filled Tube)工法の研究も進んでおり、高い施工技術を保持しています。鋼材とコンクリートが相互に助け合うこの工法の長所を生かし、経済的に、適切な大きさの柱断面と大きなスパンを実現し、自由度の高い構造躯体を構築しています。

 また、土壌の汚染物質を微生物の力で浄化する「バイオレメディエーション」や、地質・岩盤の総合解析、さらに史跡などの文化財保存においても優れた技術を誇っています。

株式会社大阪螺子製作所 専務取締役  西田英夫 様
株式会社鴻池組 執行役員 技術研究所長 太田寛 様

 執行役員 技術研究所長の太田寛様は、技術研究所の役割を次のように語ります。「地球環境問題と建物の安全性確保への取り組みは、建設会社の責任として、避けて通れません。当所では、温暖化などにより、過酷さを増す自然災害に備えるためのシミュレーション力、耐震・制振・免震など、地震に備えるための技術力などの向上を間断なく行っています。新築か改修物件かにこだわることなく、建物の安全と安心、温暖化対策やそのための省エネルギー化実現などに対する答えを出すのが研究所のミッションだと考えています」。

 そんな同所が取り組んできたのが、高効率の省エネ性を実現する建築物ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)です。日本のエネルギー消費量の3割を占めるとされる民間のビルやオフィスの省エネ化は、建設業界では急務の課題。2017年1月、これまで蓄積してきた研究データや技術を活かして、クライアントに先進の省エネ技術を体感していただくためのショールームを兼ねたZEB化改修を完成させました。

ZEB化時代を拓く、現実的な改修コンセプト

株式会社鴻池組
東京本店
設備エンジニアリング部設計課
課長代理  川原淳一 様
株式会社鴻池組
東京本店
設備エンジニアリング部設計課
課長代理 川原淳一 様

 省エネと再生可能エネルギーの活用により、一次消費エネルギーを実質ゼロにする建築物ZEBの事業は、経済産業省が推進しています。“エネルギーを「減らす」「上手に使う」「創る」”というコンセプトのもと、築20年、延床面積3,000uの本館のZEB化に挑戦し、同省の実証事業に採択されました。

 「あえて新築ではなく、既存のビルを改修することは、多くのビルオーナーのお客さまのメリットにつながるのではないかと思いました。自社ビルですから実験的なこともできますし、ZEB化改修の経験者としてクライアントに提案ができます」と、改修の意図を語る太田様。

 「設計・施工のポイントは、既存の構造のままで断熱効果を上げること。3階3部屋を窓まわりの断熱・日射遮蔽の体感ルームとして、それぞれ異なった計画とし、その効果の違いを体感できるようにしました。また、壁の断熱には、冷蔵庫の断熱材のような厚さわずか8ミリの真空断熱材を内貼しました」と語るのは、設計を担当した東京本店 設備エンジニアリング部設計課 課長代理の川原淳一様。

 「天井全体に輻射パネルを使った温度ムラのない空調システムや、高度なエネルギー管理システム“BEMS”も採用。さらに建物の下にある大空間の免震ピット内の温度の安定した空気を使用するクールトレンチも効果を発揮しています」と、川原様は改修の効果を強調されます。

BEMSによる最適な統合制御と管理
BEMSによる
最適な統合制御と管理

日射追従ルーバー
日射追従ルーバー

LED照明と空調のパーソナル吹出口
LED照明と空調のパーソナル吹出口

音響実験棟屋上の太陽光パネル
音響実験棟屋上の太陽光パネル

自然換気を実現した本館ロビーの換気窓
自然換気を実現した
本館ロビーの換気窓

後付けLow-Eガラス
後付けLow-Eガラス

床にあるクールトレンチ吹出口
床にあるクールトレンチ吹出口

本館屋上の太陽熱パネル
本館屋上の太陽熱パネル

 「本館のZEB化は一次エネルギー消費量の削減が目的ですが、本館の照明・空調の電気使用量がZEB化前に比べて約50%下がりました」と、同部 部長の花田俊之様も手ごたえを感じています。

 川原様は、「設計時の第一の目標は、補助金支給の条件となる一次エネルギー消費量50%削減をクリアすることでした。途中、ZEBの定義が見直され、設計を変更することもありましたが、結果として多くの要素技術を採用でき、評価機関からも『これだけ多種類の要素技術を出しているところは珍しい』と言われました」と、語ります。

 本館は、設計で再生可能エネルギーを合わせて一次エネルギー消費量削減59%を達成し、100%削減の「ZEB」、75%以上削減の「Nearly ZEB」に次ぐ、「ZEB Ready」を達成。「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)☆☆☆☆☆ ZEB Ready」として第三者評価を取得しています。

高効率の変圧器と省エネ研究で、
さらなるZEB化の高みをめざす

株式会社鴻池組
東京本店 設備エンジニアリング部
部長  花田俊之 様
株式会社鴻池組
東京本店 設備エンジニアリング部
部長 花田俊之 様

 今回のZEB化改修では、日立産機システム製の超高効率のアモルファス変圧器が新たに採用されました。24時間365日稼働する変圧器は、待機電力ロスが発生しますが、それを最小限に抑えることができます。

 「高効率変圧器は、ZEB補助金の対象となり、変圧器のロスを低減できる商品として実際に使用しているお客さまからの評判も聞いていましたので、採用を決めました」と川原様は語ります。

 「次は、設計で『Nearly ZEB』や運用面で『ZEB』をめざしたいですね。例えば、冬季に空調用に使用している太陽熱温水を夏季に有効利用するなど、さらなる省エネを追求していきたいと思います」と、展望を語られます。2017年1月の改修以降、見学や問い合わせも多く、ZEB化改修への関心の高さを肌で感じているそうです。

省エネ性能に優れた「アモルファス変圧器」
省エネ性能に優れた「アモルファス変圧器」

屋上に設置された受変電配電盤屋上に設置された受変電配電盤

 所長の太田様も、「会社がCR(カスタマーリレーションズ)に力を入れており、私たち研究所もお客さまとの関係性を大事にしていきたいと思っています。今回のZEB化改修をきっかけにぜひ技術研究所のことを多くのお客さまに知っていただきたいと思います」と述べるとともに、「今後、日本全体で働き手が減っていく中で、どのように生産性を上げていくかという課題がありますが、それについてはVR、AR、ロボットなどの採用も見据えて取り組んでいくつもりです」と、今後の研究テーマを紹介されました。

 「まだ年間を通したデータがないので、採用した要素技術ごとの効果や費用対効果を年間を通して検証し、要素ごとに評価する予定です」と花田様。「すでに今までの計測により改善策もあがっており、それも現実化していこうと思います。スタートしたばかりですが、日立産機システムさんの総合力で、いろいろなサポートもお願いします」と、太田様からは期待の言葉をいただきました。

 日立産機システムでは、データの収集や分析について、サービス部門と連携した運用のお手伝いやポンプの省エネ化、小水力発電という技術もあるので、お役に立てると考えています。今後も技術研究所様とともに、これからの建築物の安全・安心、環境・エネルギー問題に貢献したいと思います。

お客さまのベストパートナーをめざして
日立産機システム 製品関係者 インタビュー