季節を通じて活躍する日立産業用蓄電システム(左) 眺望に恵まれた羽生の丘に、約9,000坪の広大な敷地を有している(右)
医療法人社団 俊香会
介護老人保健施設
お年寄りにやすらぎと生き甲斐をもたらす、
スマート発電システムの快適空間。
オーベルジュとはフランスの田舎に点在する、
食事の美味しい宿泊施設のこと。
宮城県中央部の自然環境に恵まれた丘に立つ『羽生の丘・オーベルジュ』は、
その名の通り、部屋の配置や空間づくり、あたたかなケアにこだわり、
高齢者がゆったりと過ごすことをコンセプトに開設された介護老人保健施設です。
雪が降り、冷え込む冬季をはじめ、年間を通じて快適な環境を維持するには、
低コストで安定的なエネルギー供給システムが欠かせません。
今回は、快適な環境づくりのために導入された太陽光発電・蓄電システムと、
それを制御する日立産機システム製品をご紹介します。
医療法人社団 俊香会
介護老人保健施設
羽生の丘・オーベルジュ
ゆったり過ごすことをコンセプトにした、
こだわりの介護老人保健施設
長年、内科・小児科医として、患者さまとじっくり向き合い、地域医療を担ってきた『医療法人社団 俊香会』理事長の杉山善助様。ここ宮城県黒川郡大郷町は高齢者率が高く、老後を「遠方の大病院ではなく、近くの快適な施設で過ごしたい」という声が以前から多く寄せられていました。そんな要望に応え、「高齢者や認知症の方に、家庭的な雰囲気の中で、やすらぎと生き甲斐のある生活を送ってほしい」との思いから、杉山様が2004年にオープンさせたのが介護老人保健施設『羽生の丘・オーベルジュ』です。
自然豊かな高台に広がる約9,000坪の敷地には、6〜10人用の平屋建てユニット14棟が独立して建ち、フランスの宿泊施設「オーベルジュ」の名にふさわしいリゾート地のような佇まい。ここでは100人が入所できるほか、短期入所療養介護(ショートステイ)や通所リハビリテーション(デイケア)、居宅介護支援に対応。2012年には別法人の特別養護老人ホーム『ウィング』が隣に開設し、多様な老人医療福祉のニーズに応える体制が整いました。
医療法人社団 俊香会 介護老人保健施設 『羽生の丘・オーベルジュ』
副施設長 最知豊 様 (左) 事務長 木村寿明 様 (右)
『羽生の丘・オーベルジュ』には、「ほかの介護老人保健施設とは一線を画す工夫が施されている」と、副施設長の最知豊様は語ります。「ホールと事務室を中心に個室が放射状に配置されているので、施設内を歩いても飽きがこないのです」。
建屋の構造材には、無垢の良質木材などを使い、採光も工夫されています。個室は基準以上の広さを確保し、部屋ごとに壁紙やタイルの色を変え、玄関まわりに御影石を使うなど、細部にもこだわりました。「よそにはないあたたかみのある施設にしたい」という理事長の思いが実現されています。
サービスにおいても、「1ユニット6床、職員1人に対して利用者は約6人なので互いの距離感が近く、入所の方も自分の要望を訴えやすいようです。ショートステイやデイケアでも、あたたかく親しみやすい関係づくりができるようケアにあたっています」と、最知様と事務長の木村寿明様は、笑顔で自信をのぞかせます。
暖房費削減を求めてたどり着いた
太陽光パネル+蓄電池システム
医療法人社団 俊香会
統括SE 坂本登 様
お年寄り向けの施設で重要なのは、快適な環境を常に維持すること。大郷町は、夏は涼しく冷房費がかからない反面、冬季は水道が凍るほどの寒さの中、室内を26〜27℃に保たなければなりません。開所当時は、電気よりも低価格のプロパンガス暖房機器を使っていましたが、近年ガスの価格が3倍近くまで値上がりしたため、見直さざるを得なくなりました。
俊香会の統括SEを務める坂本登様は、「有効な選択肢として、太陽光発電の導入は最初から検討していました」と、10年前を振り返ります。当時、太陽光パネルは高額でしたが、3年ほど前にパネルの価格が下がり、導入コストを無理なく償却できる手応えをつかむことができました。また、東日本大震災で被災した東北三県の医療法人を対象にした「スマートエネルギーシステム導入促進事業費補助制度」(経済産業省)を利用できることも追い風となりました。この利用条件が、大規模災害時に最低3日間自立する能力を有することとあり、太陽光発電だけでは難しいため、蓄電池を併用したシステムの構築へと計画を変更。同じく補助対象だった地中熱利用のヒートポンプシステムも採用することにしました。
居室(個室)
娯楽室
談話室(10人床)
システムの運転状況を表示する館内モニター
「実際の計画では、当初よりも太陽光の発電規模を下げ、蓄電池もコストに優れた鉛蓄電池に変更し、各メーカーさんに提案を求めたところ、お返事をいただいたのが日立産機システムさんだったのです。技術的な根拠もなく私が投げかけたことを受け止めて、投げ返してくれた。そんなキャッチボールを経て、通年で効率性が良く、事業的にもコストパフォーマンスに優れた現在のようなシステムの全体像が固まってきました」と、坂本様は経緯を語ります。
そして、2015年12月に、制御盤、蓄電池用パワーコンディショナ、切替盤、1,152kWhの鉛蓄電池(日立化成)、エネルギー管理システムを導入。稼働して半年余り経ちますが、冬は系統電力の購入が必要になるものの、通年で見るとエネルギー購入費を上回る省エネ効果が見込めるようになったとのこと。日立産機システムの製品が、お年寄りの快適な環境づくりに役立っているのです。
広大な施設内のいたるところに設置された太陽光パネル
さらなる省エネと経費削減をめざして、
システムのカスタマイズに挑戦
株式会社メデア
代表取締役 山本一哉 様 (右)
取締役 工事部長 出羽高秋 様 (左)
坂本様の計画において、太陽光パネルの情報提供とアドバイス、補助金申請など、早期から尽力されたのが株式会社メデア様です。今回も260W×1,790枚の太陽光パネル及び蓄電システムの施工を担当されました。
「坂本様のお考えは、当社のビジネスモデルと合致したので、すぐに意気投合しました。太陽光パネルの設置工事は、急斜面に施工するという点で苦労がありました。通常は重機を入れて杭を打ち、その上に架台を載せるのですが、重機が入らないので全部手作業でした。補助金申請の締め切りに間に合うように工期のバランスをとるのも難しかったですね。でも、日立産機システムさんのご提案に沿ってシステムが完成して本当に良かったです」と、代表取締役の山本一哉様は手応えを感じています。
キュービクル(左)、制御室・蓄電池室(右)
日立産業用蓄電システム(制御盤)
パワーコンディショナ(100kVA)
鉛蓄電池(1,152kWh)
太陽光発電用パワーコンディショナ(9.9kW)
しかし、坂本様にとっては太陽光発電・蓄電システムは、まだ完成していないようです。全消費エネルギーのさらなるコストダウンをめざして、毎日システムを見直していると言います。電気の価格は、8〜22時の時間帯よりも深夜帯の方が3分の1まで安くなります。そこで昼間は、太陽光+蓄電池の放電を利用し、22時を過ぎたら買電するのですが、気象条件は日々刻々変わります。坂本様は、気象予報システムのデータを取り込んで、安定時はそのまま自動運転させ、日照によっては放電するタイミングを調整するとともに放電量を上げ下げし、より効率的に活用しているのです。「イントラネットと制御システムをつなげ、どこにいても遠隔操作できるようにカスタマイズしました。今後は、システムが自律して判断し、制御できるようなアプリケーションがほしいですね。日立産機システムさんには、他のメーカーではやらないようなものを、最適価格で提供していただきたいものですね」と、ご期待を寄せていただきました。
現在、入所待機者が100名以上いる状況を踏まえて、2016年11月15日には、近隣に36床のサービス付高齢者向け住宅『アイル羽生』が開設される予定です。ここでも太陽光発電が検討されています。省エネ効果を入所者に還元することができるからです。
これまでに坂本様からいただいたご意見やご要望、運用データは、次のシステム開発に必ず生かしていきます。今後も俊香会様とは長くお付き合いさせていただき、より素晴らしい製品・システムをご提案してまいります。
( vol.87・2016年7月 掲載 )