株式会社日立製作所
株式会社日立産機システム
モーター効率96%を実現する材料評価・設計技術を開発
株式会社日立製作所(執行役社長兼COO:東原敏昭/以下、日立)と株式会社日立産機システム(取締役社長:青木優和/以下、日立産機)は、このたび共同で、産業用モーターの国際高効率規格の最高レベルであるIE5*1を達成するアモルファスモーター*2を開発しました。これは、アモルファスモーターの鉄心に用いているアモルファス金属*3の高精度評価技術と最適設計技術を開発したことにより実現したものです。この技術を用いて試作した11kWアモルファスモーターは、従来の体格以下で、これまでのIE4*4クラスのモーターの損失をさらに3割低減し、96%の高効率化を実現できることを確認しました。今後は、2015年度の製品化をめざし技術開発を進め、産業用ポンプやファン用途向けなどに販売をしていく予定です。
なお、本技術の一部は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「希少金属代替・削減技術実用化開発助成事業」を受けており、実用化開発の過程において、さらなる電力削減要求へのニーズに対応して開発したものです。
近年、地球温暖化などの環境問題に対する社会的関心の高まりから、電気機器の効率を高め、エネルギー消費を抑制する技術が注目されています。モーターにおいては、米国では2010年からIE3以上のモーター使用の義務づけが開始されており、日本でも2015年度から同様の規制強化が開始されるなど、省エネの観点から、産業用機器などにおいて高効率モーターへの置き換えのニーズが各国で高まっています。このような背景から、日立と日立産機は、アモルファス金属を鉄心に採用し、モーターの効率を高めることができる、アキシャルギャップモーターの基礎技術を2008年に開発し、大容量化や更なる高効率化とシリーズ化に向けた製品化を推進しています。2012年には、IE4に適合するエネルギー効率約93%を達成する、11kWアモルファスモーターの試作に成功しました。
今回、日立と日立産機が開発した中型容量クラスの11kWアモルファスモーターは、従来の体格以下で、構造を大幅に変更することなく、IE4よりも高いエネルギー効率をクリアし、効率ガイドラインの最高水準であるIE5を達成します。
日立と日立産機は、これまでに変圧器で培ってきたアモルファス金属に関する加工ノウハウを有しています。アモルファス金属は、加工が困難であることや、モーターの鉄心に加工した時に素材の磁気特性が大きく変化する特徴を持っているため、モーターの効率を高めるためには、使い方の工夫が必要でした。そこで今回、アモルファス金属材料が持っている特性を充分に引き出す適正設計を行うことにより、モーターの効率を大幅に向上させることが可能となりました。
今回開発した技術の特長は以下の通りです。
アモルファス金属は、従来のモーターに使用されている電磁鋼板よりも鉄損が約1/10と大幅に損失が低い材料ですが、モーターのステーター鉄心に利用する場合には、加工劣化性*5が問題となります。加工劣化性とは、鉄心を加工したときの残留応力や、固定されている時の応力状態などによって、磁化特性や鉄損特性が大きく劣化してしまうものですが、従来用いてきた方法では、実際のステーター鉄心にアモルファス金属を適用した状態でのアモルファス金属の磁気特性を正確に把握することができませんでした。そこで今回、鉄心の表面に超小型磁気センサ*6を配置することで、今まで測れなかった内部の磁束の流れなどの測定方法の実用化に成功しました。従来の方法では、アモルファス金属の損失測定誤差が、損失の2〜5倍と大きく、実際の状態を正確に把握できませんでしたが、本手法により測定誤差を±5%以内と、大幅に精度が向上できることを確認しました。
これまでに培ってきた各種の三次元有限要素法解析技術*7に加え、パーミアンス法*8による高速・高精度モーター設計手法を開発したことで、電気特性から熱計算までの特性予測がこれまでの1/10以上高速に、かつ、2倍以上高精度に行えるようになりました。さらに、材料特性にアモルファス金属の磁気特性を反映し、その鉄心形状を大規模パラメータサーベイによって最適化することで、これまでよりも高い効率での設計を可能としました。今回、11kW容量のモーターを対象に、冷却用のファンを無くしモーターの軸長を短くしたファンレス扁平構造の設計を行って試作評価した結果、IECの高効率ガイドラインであるIE5レベルを達成できることが確認できました。
IE5の効率レベルを達成した11kWモーター試作機
試作機のモーター効率比較(11kW)
日立と日立産機は、2014年7月23日(水)〜25日(金)に、東京ビッグサイトで開催される「第32回 モータ技術展(「TECHNO-FRONTIER 2014」内)」において製品展示を行うとともに、併設のモータ技術シンポジウムにおいて、詳細の技術発表を実施する予定です。
株式会社日立製作所 日立研究所 情報企画部 [担当:鈴木]
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