アモルファス金属を鉄心に用いて効率を約5%向上
株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)は、このたび、株式会社日立産機システム(社長:椎木 清彦/以下、日立産機)と共同で、モータの心臓部分である鉄心(コイルを巻いた鉄の芯)に、アモルファス金属と呼ばれる、エネルギーの損失が少ないという特性を持つ金属を採用することで、従来モータに用いていたネオジウムやディスプロシウムなどのレアメタルを含む磁石を用いなくとも、フェライト磁石でモータの効率を高めることができる技術を開発しました。
アモルファス金属は、規則正しい結晶構造を持たない金属で、エネルギーの損失が少ないという特性を持つことから、モータの効率を高めるのに有用な金属である一方、強度が高く加工が困難なこと から、これまでモータ用途では実用化されていませんでした。
今回、日立と日立産機は、アモルファス金属を巻いて鉄心状に形成する「巻鉄心技術」を開発し、切断、切削などの加工をしないでアモルファス金属をモータの鉄心に応用することを可能にしました。これにより、従来モータに用いていたレアメタルを使わない永久磁石モータを実現しました。また、「三次元磁界解析技術」を開発し、アモルファス金属の高透磁率性*1と低飽和磁化特性*2を最大限に考慮することによって、モータの効率を約5%向上*3することができました。
本技術は、産業機器や、家電、自動車など幅広い分野における小型モータ搭載機器のさらなる省エネルギー化を実現するもので、また、レアメタルなどの希少な資源の保全にも貢献するものです。
近年、地球温暖化などの環境問題に対する社会的な関心の高まりから、電気機器の効率を高め、エネルギー消費を抑制する技術が注目されています。また、資源枯渇の観点から、レアメタルのリサイクルや代替材料の開発も注目を集めています。
モータは主に、磁性材料(鉄心、磁石)と導電材料(電線)、およびこれらを支える構造部材で構成されています。モータの効率を高めるためには、磁性材料によるエネルギーの損失(鉄損)と導電材料による損失(銅損)の低減が必要となります。アモルファス金属は、現在ほとんどのモータに使用されている電磁鋼板に比べて、高透磁率性と低飽和磁化特性という特徴があり、エネルギーの損失が少ないことから、モータの鉄心に用いることでその効率を高めることが可能です。しかし、アモルファス金属は電磁鋼板と比べ、厚さが10%以下と薄く、その上数倍硬い材料であることから加工が困難で、一般的なモータ用途では実用化されていませんでした。
このような背景から、今回、日立と日立産機は、これまで「アモルファス変圧器」*4の製品で蓄積されたアモルファス金属の利用技術を活かし、モータの鉄心にアモルファス金属を応用することで、レアメタルを用いない高効率の小型モータ技術を開発しました。
なお、本技術は、2008年11月12日から名古屋市の中部大学名古屋キャンパスで開催される電気学会主催の「回転機研究会」にて発表する予定です。
また、日立産機では、2008年11月12日(水)〜11月14日(金)に開催する「日立産機システム総合展」において、アモルファスモータを参考出品いたします。
強度が高く加工が困難なアモルファス金属をモータの鉄心に応用するために、アモルファス金属を巻いて鉄心状に形成する、「巻鉄心技術」を開発しました。これにより、切断、切削などの加工をしないで、アモルファス金属をモータの鉄心に用いることができ、従来モータに用いられていたネオジウムやディスプロシウムなどのレアメタルを含む磁石を不要とする設計が可能になりました。
アモルファス金属の特徴(高透磁率性と低飽和磁化特性)を最大限に考慮するために、モータの特性を従来よりも細かく解析する「三次元磁界解析技術」を開発し、この解析技術を用いてモータを設計することで、モータの高効率化を実現しました。今回、150W出力のモータを試作して検証した結果、効率を約5%向上できることを確認しました。
図1 今回開発したアモルファス金属を用いた巻鉄心
図2 今回開発した巻鉄心を用いたモータ構造
以上