新機種のドライルーツ式真空ポンプ「FTP型シリーズ」の制御盤に設置された日立製インバータ (左)
パッケージ型ドライルーツ式真空ポンプ「FTP型シリーズ」(右)
社名の由来は“守り神”、スローガンは“地球環境を守る”。
ルーツ式にこだわるブロワと真空ポンプの専門メーカー。
モノづくり現場では、エアブロー用低圧ブロワ・空気輸送用ブロワや、
真空乾燥、真空成形、吸着搬送などに使われる
真空ポンプが幅広く活躍しています。
守り神を意味する「アムレット(an amulet)」という言葉から生まれた
「アンレット(ANLET)」の名を冠した株式会社アンレットは、
ルーツブロワとルーツ式真空ポンプの分野において、
独自の技術力と多種多彩なラインアップで圧倒的な存在感を放つ専門メーカーです。
今回は、開発と製造での強みを活かして成長を遂げてきた同社の取り組みと、
製品の静粛性や省エネ性、制御性などに貢献している
日立産機システムの製品をご紹介します。
株式会社アンレット
ルーツ式にこだわって地球を守り、
部品メーカーから完成品メーカーへと進化
株式会社アンレットは、「先端テクノロジーの発展を支え、地球環境を守る」をスローガンに掲げ、一貫してルーツ式にこだわって水用ポンプ、ブロワ、真空ポンプ、粉じん回収機などを開発・製造し、発展を遂げてきました。
同社は、1944(昭和19)年に機械加工事業を立ち上げ創業。戦後は、水用ポンプの開発・製造に着手しました。1953(昭和28)年には油用ロータリーポンプを開発し、その後、大手自動車部品メーカーのエンジンとマッチングさせたルーツ式ポンプを相手先ブランドで販売。ルーツ式とは、断面が“まゆ型”をした2軸の回転翼をそれぞれ逆方向に回転させて、空気や液体を送るシステム。1963(昭和38)年には同製品を自社ブランドで販売するまでになりました。
ルーツ式エアブローパッケージ
飛躍のきっかけは、液体用ポンプから空気を送るルーツブロワへと開発・生産の軸を移したこと。このルーツブロワの成功の背景には、技術陣の頑張りがありました。「当時の他社ルーツブロワは2葉式ロータでしたが騒音と振動が大きいことが欠点でした。後発メーカーとして特色を出そうと、あえて製造がむずかしい3葉式ロータにし、騒音と振動を低減しました」と、代表取締役会長の横井隆志様は当時を振り返ります。この挑戦が効を奏し、同社はまたたく間にルーツブロワの分野でその名を知られる存在へと成長することができました。
現在、同社のルーツブロワは累計生産台数120万台を誇り、シェア60%と業界トップ。この製品を採用した自動車関連企業では、エアブロー工程において70%の省エネを実現したという例もあります。
この3葉式ルーツの技術を応用し、さらに多段ルーツ式真空ポンプの生産を1985(昭和60)年にスタート。「排気系に油・水を使わないドライ真空ポンプを」というお客さまの声を受けたドライルーツ式真空ポンプは、多段式にすることで真空度を上げることに成功し、さまざまな産業分野で使われています。
「これまでの環境分野での技術貢献により、平成20年度に愛知ブランド企業に認定され、平成24年度にはグッドカンパニー大賞優秀企業賞を受賞しました」と、横井会長は胸を張ります。
静粛性、省エネ性に優れ、制御性が高く
メンテナンスも容易な真空ポンプ
代表取締役 会長 横井隆志 様
同社では、お客さまのさらなるニーズに応えるためにさまざまな課題に挑んでいます。
「まずは短納期対応です。最近は、お客さまによって求められる仕様が異なるケースが増えている上に、JIS規格やお客さまが関連する業界独自の規格が年々厳しくなっています。安全基準、保安基準、環境基準などにそれぞれ対応した設計をするためには、どうしてもリードタイムが長くなります。それを短納期化するために作業の改革を進め、平準化を図り、メンテナンスフリーや低騒音、長寿命・省エネ、もちろんコストダウンの要求にもしっかり応えていきたいと考えています」と、横井会長は取り組みを語ります。
そんな同社の業界での存在感を高めたドライ真空ポンプは、クリーンな空気や環境を維持でき、省エネ性も高く、さまざまな業界のモノづくり現場での需要が高まっています。
ルーツ式真空ポンプに継続的に
採用いただいている日立製制御盤
代表的製品のルーツブロワ
多段ルーツ式真空ポンプ
ルーツ式真空ポンプのIoT化を実現する
日立製IoT対応産業用コントローラ「HXシリーズ」
「真空ポンプは1段では真空度が上がらないので、多段式にし、ケーシングも2つ割にしています。多段にすればするほど高い真空度を実現できるのですが、そのためには高い加工精度が求められます。これまでに蓄積したノウハウを駆使して製造面での技術的課題を乗り越えてきました」と、独自の強みを紹介される横井会長。今、最も期待を寄せている新製品がパッケージ型ドライルーツ式真空ポンプです。
2014年から開発に着手し、真空ポンプ内のモータを制御する日立産機システム製のインバータと、工場の稼働状況に合わせて真空ポンプの台数を自動制御するプログラマブルコントローラ(PLC)を搭載した製品です。モノづくり現場において、多くの真空ポンプが同時に稼働する状況下で集中管理や稼働状況を把握し、予防保全やコスト管理に活用したいというお客さまの切実なニーズに応えたもの。「この真空ポンプは、低騒音、省エネ・省コスト、優れた操作性やメンテナンスコストの低減に大きく貢献できるので、納入したお客さまから高い評価をいただいています」と、執行役員 技術部副部長の竹田昌史様も手ごたえを実感されています。
この製品の開発初期段階から、特約店の東朋テクノロジー様と日立産機システムは、お声をかけていただきました。
開発にともに取り組んだ実績をベースに、
IoT化に対応した次世代の製品開発に挑戦
パッケージ型真空ポンプ
開発担当者
技術部 課長 林晋司 (左)
執行役員
技術部 副部長 竹田昌史 (中)
技術部 課長 横井亮知 (右)
「パッケージ型ドライルーツ式真空ポンプの開発では、最初はライバルメーカーとの差別化やコスト面で苦労があり、まさに手探り状態でした。そこで東朋テクノロジーさんと日立産機システムさんにお声をかけました。モータやインバータなどを通じて長いお付き合いがあり、それぞれの実績や技術力、ブランド力、全国規模のサービスネットワークにも魅力を感じました」と、横井会長。
竹田様は、「トライ&エラーを繰り返す中、日立産機システムさんの制御盤の試作品が非常に使いやすく、希望が見えましたね。社内テストを通してさまざまなトラブルが発生しましたが、その都度、解決に協力していただきました。お客さまに納入後もトラブルがあった時には、3社の担当者が一緒に現場へ伺い、その場で解決したこともありました。別のお客さまからは、納入後に制御内容を変更したいとのご要望があり、これも短期間に対応できました」と語ります。
同社の工場設備にも多くの日立製品をご採用いただいてきたので、以前からレスポンスの良さ、誠実な対応に満足いただいていたとのこと。横井会長からは、「今回のプロジェクトの成功でより信頼性が増し、次の製品開発にも協力いただいています」、とのお言葉をいただきました。
新製品とは、パッケージ型ドライルーツ式真空ポンプの制御システムをネットワークにつなぎ、高性能化を図るために日立産機システム製のIoT対応産業用コントローラHXシリーズを搭載した真空ポンプのこと。加速する産業界のIoT化に対応するために開発を急ぎ、すでにプロジェクトは山場を越えています。
「IoTに対応できる真空ポンプ市場は、これからさらに拡大するのでコスト競争力が重要です。東朋テクノロジーさんと日立産機システムさんには、機能面はもちろんのことコストの面でもどんどん提案をいただきたいですね」、と竹田様。
「当社は専門化したメーカーなので、大手にはない強みを活かし、愛知ブランド認定企業に恥じない製品をつくっていきたいと思います。売り上げ100億円を達成し、これから100年続くような企業にすることをめざしていきます。そのためには、お客さまのご要望に応える製品を一緒につくっていただきたいですね」と、横井会長は期待の言葉を述べられました。
日立産機システムは、東朋テクノロジー様とともに、これからも新製品の開発や生産力向上に向けて、さらに貢献してまいりたいと思います。
ルーツブロワに搭載された日立製モータ
日立製のホイスト(左)と
モートルブロック(右)
( vol.96・2018年1月 掲載 )