屋外のキュービクル内に設置された、窒素ガス発生装置 N2パック NEXTU series(左) diXコーティング(右)
暮らしと産業を化学技術と発酵技術で支える
地球にやさしいケミカルの開発をめざす。
私たちの暮らしや産業には、さまざまな化学品が欠かせません。
たとえば毎日使う化粧品、携帯電話の液晶、医療器具や電子基板。
原材料はもちろん、その製造加工でさまざまな高分子化合物が使われています。
第三化成株式会社は、化粧品やインク添加剤のベースオイル、
液晶やエレクトロニクス用ファインケミカル製品、
樹脂コーティング剤などを製造するとともに、
受託コーティングや大手化学メーカーから特殊な合成を請け負うなど、
業界で独自の地位を築いています。今回は、同社の技術力と開発力、
モノづくり現場で貢献する日立産機システム製品をご紹介します。
第三化成株式会社
高級脂肪酸の製造を皮切りに50年、
確かな成長を遂げた3つの事業と研究開発機能
第三化成株式会社は、1968(昭和43)年、先端材料専門商社の岸本産業株式会社(現、KISCO株式会社)と化学工業の先駆者チッソ株式会社(現、JNC株式会社)とのコラボレーションにより誕生。2018年1月には創業50周年を迎えます。
同社は創業以来、事業の拡大とともに独自の化学技術を活かし、開発型企業として成長を遂げてきました。その歴史は、化粧品や潤滑油などのベースオイルなどに利用される高級脂肪酸の製造から始まりました。その後、1981年には液晶やファインケミカル製品の製造や受託合成を手がけるファインケミカル事業をスタート。1992年には、コーティング事業を展開するなど事業分野を拡大し、市場での地位を築いてきました。
第三化成株式会社 五井工場 工場長 竹内弘行 様
今回お訪ねした五井工場では、3つの製造部と開発部がそれぞれの個性を発揮しています。創業当時から同社を支えてきたアルカリフュージョン部は、アルコールを原料に、高級脂肪酸やエーテルなどのさまざまな化学製品の製造を可能にする設備を有しています。また、同社の売上の60%を占めているファインケミカル部は、大手メーカーでは困難な実験的な化学反応にも積極的に取り組み、大きなラボのような機能も果たしています。さらなる成長が期待されているコーティングサービス部では、高性能を特長とするパリレン樹脂をさらに高純度・高品質にしたコーティング剤を製造し、diX®のブランド名で市場から高い評価を得ています。さらに開発部では、大手化学メーカーからの特殊な合成を受託したり、脂肪酸エステル、エーテル、エレクトロニクス用ファインケミカル製品などの研究開発に取り組み、2016年度には、微生物を介した発酵ビジネスにも着手しました。
業務部次長の寺山忠志様は、「KISCOグループの経営理念である“共創”を念頭に、化学技術と発酵技術を駆使した研究開発で貢献し、変化・多様化する市場のニーズに応えていくことをめざしています」と、同社の経営方針を紹介してくださいました。
独自の設備と技術・開発力で、
多様なニーズ、特殊なニーズに応える
第三化成株式会社 五井工場
ファインケミカル部
部長 並木勝 様 (右)
ファインケミカル部 1課
主任 中村大輔 様 (左)
同社の強みは、これまでに培ってきた開発力、技術力、そしてモノづくり力です。
アルカリフュージョン部では、独自のアルカリ溶融酸化法に沿って、反応器、分離槽、水蒸気蒸留器、中和槽、真空蒸留器で構成された2系列のプラントが稼働していますが、目を引くのが、耐アルカリ性に優れた300℃まで加熱可能なニッケル製釜。他メーカーにはない、製造上の強みを発揮しています。
液晶TVやスマートホンなどに使用される液晶化合物などを製造しているファインケミカル部では、電気特性に影響を与えるような不純物が混ざらないように、99.9%以上の高い純度で精製する優れた技術を誇っています。
コーティングサービス部では、米国のユニオンカーバイト社が開発したパリレン樹脂を独自に改善し、オリジナルのdiXダイマーを開発・製造。従来の液状コーティングでは難しい微細な凹凸まで形状通りにコーティングでき、電気絶縁・防湿・防錆・耐水・ガスバリア・耐薬品・耐熱性などに優れた性能を発揮。注射器の先端やカテーテル、電子基板など、精緻さが求められるコーティングに定評があります。
反応釜が並ぶファインケミカル棟
アルカリフュージョン製造設備
実験室の分析機器(NMR装置)
ファインケミカルの
品質を支える分析室
「当社では『安全』『生産管理』『人』の3点を大切にしています。現場で働く人が製造から分析までの必要な技術を習得し、蓄積したデータと精製技術能力を活かして安全に高品質の製品を生み出しています。また化学に強い人、設備に強い人など、多彩な人材が揃っているので、多角的な視点でお客さまのニーズに対応できているのではないでしょうか」と、理学博士でもある工場長の竹内弘行様。「規模がそれほど大きくない当社では、大量に生産する製品ではなく、お客さまごとの高度な要求にお応えする特殊な製品で勝負していかなくてはいけませんし、そのニーズに応えているという自負はあります」と、竹内様は同社の強みを語られます。「大手メーカーが研究開発から大量生産へと進むための生産技術確立に、独自の技術・ノウハウの集積を強みに、貢献しているのも特徴です」。
そんな同社のファインケミカル部の生産設備に、日立産機システム製品が導入されています。
ファインケミカル製品の安定した製造と
効率化に貢献する窒素ガス発生装置
発酵棟に設置された発酵槽
屋外でつくられた窒素ガスは
屋内配管を通って反応釜へ
「ファインケミカルの反応工程では、静電気による着火を防ぐために酸素を除き、窒素で満たした閉じた反応系を必要とします。これまでは液体窒素を充填したボンベを使用していましたが、一度に使う量が制限される上にボンベの交換作業に人手がかかることもありました。そこで大量の窒素を安定供給できる窒素ガス発生装置の導入を検討しました」と、語るのはファインケミカル部部長の並木勝様。特約店の福井電機株式会社様にお声をかけたところ、日立産機システム製品導入の提案を受けました。
「提案書に基づき窒素ガス発生量や取出圧力など必要とする能力と初期費用や今後のランニングコストなどを詳細に検討し、2016年4月導入を決めました」と、並木様。さらに、「今回は故障への対応や長期メンテナンスも含め、トータルな信頼性を考慮し、メンテナンスパックも契約しました」と語るのは、同部1課主任の中村大輔様です。「プラント建屋内ではなく、屋外に設置しなければならないという当社の希望も、日立産機システムさんの協力をいただき、窒素ガス発生装置を格納するために専用のキュービクルを設置することで、2017年4月の稼働にこぎつけることができました」と、中村様にはこれまでの対応に、ご満足いただくことができました。
今後、ますます専門的な技術力や対応力が求められる中、これからの展望について工場長の竹内様は次のように語られます。
「まず、製造3部門をそれぞれ成長させながらも、4本目の柱として2016年にスタートさせた健康食品・化粧品分野に向けた発酵事業を伸ばしていきたいと考えています。これまで蓄積してきた経験と知識を活かし、植物抽出液の発酵、血糖値を低下させる素材、香料など、発酵の技術と有機合成の技術とのコラボによる新しい製品開発や関連分野における受託開発を展開していきます。そのために国内屈指の技術者を招いたので、若い技術者のスキルアップと人間形成にも力を入れながら、お客さまの求める製品・技術を開発していきたいと思います」。
有機合成化学の分野で築いた技術力を礎に、新たに医療・バイオ分野へと飛躍されようとする第三化成株式会社様。日立産機システムは福井電機様とともに、さらなる貢献をめざしています。
窒素ガス発生装置 N2パック NEXTU series。
5.5kWタイプの圧縮機を3台内蔵しており台数制御している
( vol.95・2017年11月 掲載 )