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情報誌VoltAge21

躍進する企業を訪ねて vol.134 イチジク製薬株式会社

製造ラインに並ぶ日立産業用インクジェットプリンタ
製造ラインに並ぶ日立産業用インクジェットプリンタ

イチジク製薬株式会社

小さなお子さまを救いたい、との思いを原点に、
浣腸ひとすじ90年。健康づくりに貢献する医薬品メーカー。

かつて便秘に苦しむお子さまの治療に当たりながら、
家庭で手軽で安全に浣腸をできないかと、イチジク果実のような形をした浣腸を
考案した医師がいました。以来、その思いを引き継いで約90年。
浣腸の開発・製造を続けてきたのがイチジク製薬株式会社です。
食事やライフスタイルの変化、ストレスなどから
“排便リズム”をくずしがちな現代社会に生きる私たちの
健康維持に大きく貢献しています。
今回は、大切な医薬品づくりにひたむきに取り組む同社と、
製品の品質管理をサポートする日立産機システム製品をご紹介します。

イチジク製薬株式会社

イチジク製薬株式会社

代表取締役社長 :
齋藤 愼也
開設 :
1925(大正14)年
所在地 :
東京都墨田区東駒形4-16-6
従業員数 :
50名
事業内容 :
医薬品製造販売
◎公式サイト http://www.ichijiku.co.jp

安心して使える医薬品づくりを支えるのは、
どこまでもまじめな“ひと”の力

対象年齢や形状の違いによる
8種類の製品をそろえる
対象年齢や形状の違いによる
8種類の製品をそろえる

 「浣腸と言えばイチジク」というほど、圧倒的な知名度を誇るイチジク製薬株式会社。創業は1925(大正14)年。内科医の田村廿三郎はたさぶろう氏が医療行為として大きな注射器を使って行っていた浣腸を、来院することなく家庭でも簡単にできないかと考案したのがきっかけでした。以来、単一製品で90年以上にわたり事業を続けてきた、医薬品業界では類を見ない企業です。2005年にはオカモト株式会社と資本提携をし、経営基盤を強固なものとしました。

 浣腸は、肛門部から薬液を入れることで3〜10分後に、排泄をスムーズに促す医薬品。飲用薬のように成分が体内に残らず、排泄のタイミングを自分でコントロールできるメリットがあります。ストレスや不規則なライフスタイル、偏った食生活で便秘になりがちな成人はもちろんのこと、薬の飲めない赤ちゃんや授乳中のお母さん、自分ではうまく排泄ができない要介護の高齢者の方にも安心して使えます。

イチジク製薬株式会社 代表取締役社長  齋藤愼也 様
イチジク製薬株式会社 代表取締役社長 齋藤愼也 様

 代表取締役社長の齋藤愼也様は、「私たちは、創業者の思いを受け継ぎ、安全・安心で、使いやすい製品づくりにひたむきに取り組んできました。高い品質の製品を継続的につくり続けること、時代に合わせてより使いやすい製品を開発することが私たちの使命です」と、企業姿勢を語ります。「また私たちの強みは、高い生産技術だけではありません。浣腸をお使いになる方のことを真剣に考えて毎日医薬品づくりに取り組み、生産現場に立つ、一人ひとりのまじめさがあります。これこそ創業者から受け継いだ、苦しんでいる人を助けたい、という思いの表れだと考えています」。

 近年、浣腸を知らない若い世代が増えているといいます。そこで同社では、啓発のために1月19日を“イチジク浣腸の日”と制定し、「安全で、体内に薬が残らない浣腸の良さをもっと多くの人に知ってもらい、抵抗感なく使っていただけるようPR活動にも力を入れています」と、齋藤様。「海外でも浣腸は製造されていますが、今後は品質の高い当社の製品を、アジアをはじめとする海外市場へも展開したいですね」と、展望を語られます。

使い心地の良さに配慮した容器開発
その出来映えは、厳しい目で厳重にチェック

イチジク製薬株式会社
常務取締役
製造本部長  松田和男 様
イチジク製薬株式会社
常務取締役
製造本部長 松田和男 様

 浣腸の成分は厚生労働省が定めるルールに従っているので、ほとんど変更されることはありません。そこで製品開発の軸となるのが独自の容器包装です。

 「容器は、ポリエチレンの管を空気でふくらますブロー成形によって製造します。重力が影響するので、どうしても下の部分が厚くなってしまいます。首元のジャバラなどは、薄くなりすぎると液がもれる可能性もあるので、あまり斬新な形にはできません。現在のものは、身体の前側から使っても後ろ側から使っても、握りつぶしやすいので理想の形でしょう」と、常務取締役製造本部長の松田和男様は容器開発の苦労を語ります。近年は、介護用に開発した角度調整が可能なノズルの長いタイプ、力の弱い人向けのジャバラ付タイプ、使い終わった後の処理が便利な携帯袋付の女性向製品などを開発してきました。使い心地については、社員自らが中身の入っていない容器で実際に試し、製品化に向けて試行錯誤を繰り返してきました。現在の製品ラインアップは、赤ちゃん用・小学生用など10〜40gの容量別と、介護用Eシリーズ、押しやすいジャバラシリーズなど、合わせて8種と多彩です。

 おしりというデリケートな部分に使うため、製造ラインでとくに気を使うのが容器の検査です。先端部などに樹脂成形時のバリやキズがないかを高性能カメラで検査した後、さらに人の目で徹底的に検査をします。「不適合品が見つかるのは十数万個に1個あるかないかですが、安全・安心のために万全の体制が欠かせません」と、松田様。

 また医薬品であることから、充填工程での品質管理は最重要です。製造ラインへの社員以外の立ち入りは許されず、薬液の調合もクリーンルームで実施。それでも包装段階で髪の毛やチリが入るリスクはゼロではないので、監視カメラと目視で確認します。とくにシート包装の熱接着は厳しく管理し、接着がずれているのを見つけやすいように目印をつけた包装システムを採用。一定のスピードで流れる製品を正確にチェックするには経験が必要ですが、仕事に誇りと愛着を持つベテラン社員が真剣に取り組み、基準以上の厳しさで検査した上で安全な製品を送り出しています。

ジャバラタイプ(左) 
ノズルが長いタイプ(右)
ジャバラタイプ(左)
ノズルが長いタイプ(右)

創業当時の製品
創業当時の製品

マイクロスコープによる品質管理
マイクロスコープによる品質管理

スカイツリーからは社名が見える
スカイツリーからは社名が見える

発売当初のインクジェットプリンタから、
最新機種までご採用いただく

イチジク製薬株式会社
製造部 部長  岩崎忠則 様
イチジク製薬株式会社
製造部 部長 岩崎忠則 様

 医薬品の品質管理で必要不可欠なのが、製品のロット番号の印字です。印字がかすれていたり、消えていたりすると「薬機法」違反となり、製品を世に出すことができません。そんな重要な印字工程を、30年以上もお手伝いさせていただいているのが日立産機システムのインクジェットプリンタです。

 日立が国内で初めてインクジェットプリンタの開発に成功したのは1975年代。それまでは浣腸製品の容器包装1つ1つに手で焼きつけて刻印をしていたため、時間もかかり、印字のばらつきもありました。そこで、当時発売されたばかりのインクジェットプリンタを1台導入していただくこととなりました。製造部部長の岩崎忠則様は、「今では、10台ほどのインクジェットプリンタが稼働しています。当初はロッカーほどの大きさで、しかもインクをドライヤーで乾かす工程が必要だったのですが、小型化が進み、インクも容器の曲面に付着しやすいタイプや速乾タイプになりました。一度立ち上げると、安定して容器にも箱にも印字できます」と、その性能にご満足いただいています。インクも、最新機種では短時間で交換できるカートリッジタイプなので、誰でも交換ができるとあってご好評をいただいています。今後はさらに操作に習熟していただくために、できるだけ多くの方に当社が開催するトレーニングスクールにもご参加いただく予定です。

パッケージ印字ラインで稼働する日立産業用インクジェットプリンタ
パッケージ印字ラインで稼働する日立産業用インクジェットプリンタ

製品には管理番号を印字製品には管理番号を印字

曲面への印字は高い技術が必要曲面への印字は高い技術が必要

インクジェットプリンタの印字ヘッド
インクジェットプリンタの印字ヘッド

製品への印字例
製品への印字例

 「日立産機システムさんは、モノづくりがしっかりしていて、インクジェットプリンタの性能やメンテナンスに安心感がありますが、今後はモノづくり現場の安全・安心のために、エタノールインクの導入を進めていきたいと考えています」と、新たな取り組みもご検討されています。

 松田様も、「医薬品における安全・安心のハードルはさらに厳しくなっていきますが、私たちはその上をいくための体制づくりや社員教育に力を注いでいきたいと思います。そして、新たなサービスや付加価値を生み出し、『さすがはイチジク製薬』と思っていただけるものをお届けしていきます」と、抱負を述べられました。

 日立産機システムでは、お客さまのご要望にお応えするとともに、新たな製品やサービスづくりのお役に立てるよう、今後もさらに努力してまいります。

お客さまのベストパートナーをめざして
日立産機システム 製品関係者 インタビュー