かりんとうの充塡ライン。一緒に充塡される窒素ガスによって鮮度が保たれる
日本最大級の“かりんとう”の品揃え。
伝統の味を守りつつ、新たな味に挑戦し続ける老舗メーカー。
身近なお菓子として長年親しまれてきた “かりんとう”。
最近は野菜や果物、多彩な食材を使った
おしゃれでヘルシーな新感覚のお菓子としても人気です。
株式会社旭製菓は、昔ながらの製法と厳選した原材料にこだわりながらも、
次々と新しい商品を開発。
お菓子のオリンピックと呼ばれる全国菓子大博覧会で何度も受賞を果たすなど、
おいしいかりんとうを提供し続ける創業92年の老舗です。
今回は、同社が貫いてきた伝統へのこだわりや商品開発力の一端、そして
おいしさと安全性を支える日立産機システム製品を紹介します。
株式会社旭製菓
西東京名物を生んだ創業家の歩みと
新工場に賭けた思い
看板商品の『ごま大学』や
その他の人気商品
埼玉県深谷市内を走る国道をはずれて細い道を進むと、緑に囲まれた情緒ある日本家屋の佇まいが見えます。ここは『隠れ河原のかりん糖 花園工場直売店』。今回お訪ねした株式会社旭製菓の花園工場に隣接する直売店です。色とりどりのかりんとうが並ぶ店内からは、名前の由来である荒川を望むことができます。
旭製菓の創業は1924(大正13)年。創業者が横浜で営んでいた雑貨屋の一角で、かりんとうを製造・販売したのが始まりでした。戦後、二代目が東京都杉並区荻窪に工場を開き、1965年には西東京市(旧保谷市)に移転。1990年には三代目の現社長・守下武彦様が事業を引き継ぎ、「安全でおいしいものを」という徹底したこだわりから、厳選された材料を国内外問わずに探し求め、創意工夫を活かした商品を開発。“西東京の名物”と認められるまでになりました。
株式会社旭製菓 取締役 守下綾子 様
かりんとうブームとともに事業が伸びていく一方、周辺では宅地化が進んだため工場の拡張が難しくなりました。「社長である父は、新工場の用地を自らの足で懸命に探すことにしました。その結果、吉方とされた故郷の秩父方面で、広さ・環境・交通の条件がそろった当地を見つけることができました」と、取締役の守下綾子様は振り返ります。ところが用地取得交渉は初めから難航。「父は地元の人から『あの人また来たよ』と噂されるほど、東京から通い詰めたものです。スーツ姿で農家を訪れたら、地上げ屋と間違えられたこともあり、ジャンパー姿で中古の軽トラックを運転して各地を回ったこともありました」と、笑いながら語る守下様。
やがて10年間の努力が認められ、当時の町長の理解も得て、用地確保のめどが立ったのが2005年。「社長は最前線で頑張り、用地取得、建設、設備機器の購入など資金の工面はすべて母が担当しました」と、ご両親の苦労をしのびます。
2006年にようやく完成した花園工場でしたが、当初は仕事が少なく、従業員は来る日も来る日も工場の掃除をしたそうですが、この時に頑張ったパート従業員の女性数名は、今では役職者として会社を支えているそうです。
こだわりの製法とオリジナルのアイデアが生んだ
豊富なラインナップが火をつけたブーム
関東製菓工業有限会社
代表取締役 岩田彰弘 様
花園工場の生産が軌道に乗ると、社長は工場に隣接した店でつくりたてのおいしいかりんとうを販売することを発案されます。国道から離れた人通りの少ない場所でしたが、それを逆手にとって『隠れ河原のかりん糖』と命名。周囲の「売れるのか」という心配をはねのけ大胆な広告を展開し、開店当日はあまりの人出の多さにパトカーが駆けつけるほどだったといいます。
花園工場ではその後2つの工場を増設し、現在では月に700種以上、一日あたり約30種のかりんとうを製造しています。その中で創業時からの味を伝えている代表的な商品が、『旭の黒(樽仕込み黒)かりんとう』です。今でこそ容器は違いますが、数年前まではサワラの木でできている樽を使用して製造。「どの商品も小麦粉を自然発酵させてつくっています。温めて発酵を促したり、添加物で発酵を早めたりはしていません。どうしたらおいしいもの、安全なものをつくれるかというところに、とことんこだわる姿勢は昔から変わっていません」と、守下様は人気の秘密を語ります。
小麦粉、酵母、砂糖など、
選び抜かれた原材料を使用
生地の発酵は温度や湿度によって
寝かし具合を微調整
蜜かけや味付けは
長年の経験による職人の手作業
「隠れ河原のかりん糖 花園工場直売店」
味のバリエーションは、
定番から斬新なものまでさまざま
独自の蜜かけ技術を活かした
ポップコーン
同社の「たかが かりんとう、されど かりんとう」とのこだわりの精神は業界でも認められ、国産小麦と赤穂の天塩を使用した『ごま大学』は、全国菓子大博覧会において最高位の名誉総裁賞を1998年に受賞。その後『こゆきかりんとう』『きんぴらごぼうかりんとう』『クッキーかりんとう塩バター風味』が続々と同賞を受賞。4回連続で最高賞という快挙を成し遂げ、旭製菓の名を高めることとなりました。その後も地元産の野菜、チーズ、惣菜などを練り込んだ新感覚のかりんとうの開発を進め、新たなかりんとうの世界を開きました。「ただ、『キャラメルかりんとう』や『チョコかりんとう』などの新ジャンルの商品で蜜などをコーティングする工程は、これまでのかりんとうづくりで蓄積した技術がなければできなかったので、やはり伝統の力はいつの時代も大切なものです」と、守下様。
また販売面においても、同社では意欲的にチャネル開拓や展開に挑戦しています。製造した商品を直売店と加盟店、通信販売で販売するとともに、大手流通企業のプライベートブランドなどのOEM製造や、新しいアイデアを取り入れた商品の企画製造販売にも積極的に取り組み、事業の持続的な成長を図っています。
おいしさと鮮度を保つ窒素発生装置の導入で、
お客さまからの信頼をさらに確かに
株式会社イシダ 東京支社
東日本産機システム部
営業三課 小林修平 様
かりんとうの製造工程は、小麦粉・水・酵母をミキサーで「練り」「発酵」させた後、「切断」「揚げ」「味付け」「充填」します。この製造ラインづくりに、西東京工場の時からパートナーとして関わってきたのが計量・包装・検査機器のトップメーカーである株式会社イシダ様です。同社では、かりんとうを袋に詰める充填ラインに、日立産機システム製の窒素ガス発生装置を組み込むことをご提案されました。袋詰めする時に窒素ガスを入れることで酸化を遅らせ、鮮度を保ち賞味期限を延長できるので、食品業界では幅広く活用されています。
元花園工場長で、現在はグループ会社である関東製菓工業有限会社代表の岩田彰弘様は、「窒素ガス発生装置の導入により、油脂の変質の指標である酸価や過酸化物価などの検査では間違いなく効果が出ています。お客さまに届いた時に品質が落ちていないことを第一に考えていますのでうれしく思いますし、スーパーや問屋さんの“賞味期限を長くしてほしい”というご要望にも応えることができました」と、導入成果をご紹介されます。
最初に導入された7.5kWタイプの日立製窒素ガス発生装置
かりんとうの充塡ライン
11kWタイプの
日立製窒素ガス発生装置
(コントロールユニット)
「導入にあたっては窒素ガスボンベにするのか窒素ガス発生装置にするのか、さまざまなシミュレーションを重ね、イニシャルコストとランニングコストを比較した上で、日立産機システム製品をご提案させていただきました。当社としては、本当に旭製菓様にご提案する価値があるものを選ばせていただいたと自負しています」と、株式会社イシダ 東京支社の小林修平様。
「今後は健康志向を意識した、おいしい商品をどんどん開発していきたいです。また当社の“蜜がけ”の高い技術を活かして、海外で人気のシリアルバーのようなものにも挑戦したいですね」と、展望を語る守下様。近年はアイデアマンの社長の後を追うように若手社員の活躍も目覚ましく、『アンソニーズポップコーン』など開発者の名前を打ち出したブランドやパッケージも注目を集めています。フレッシュなアイデアと実行力で、ますますの発展が期待される同社。おいしさと安全をさらに高めるために、日立産機システムは株式会社イシダ様と株式会社関東日立とともにこれからも新たなご提案をさせていただき、お力になれるよう努めてまいります。
( vol.90・2017年1月 掲載 )