ページの本文へ

Hitachi

情報誌VoltAge21

お客さま導入事例 躍進する企業を訪ねて  vol.130

3.7kW×4台のポンプで構成された日立インバータ・ウォータエース(左)  次々とつくられる『ナボナ』(中)
亀屋万年堂の代名詞ともいえる『ナボナ』(右)
3.7kW×4台のポンプで構成された日立インバータ・ウォータエース(左) 次々とつくられる『ナボナ』(中)
亀屋万年堂の代名詞ともいえる『ナボナ』(右)

株式会社亀屋万年堂

“いつもの変わらぬ味を届けたい”──
ロングセラーの銘菓を生み出す、あたたかい思いと省エネ工場。

多くの人に愛され続ける銘菓『ナボナ』で知られる株式会社亀屋万年堂。
材料にこだわり、心を込めて和菓子をつくった創業者の精神は、
同社の横浜工場に受け継がれ、繊細な心配りで変わらぬおいしさを守っています。
どれだけ生産設備や機器が近代化されても、お菓子は生きもの。
季節や気候の変化に合わせて、お客さまが求める味と品質を実現するために、
絶え間ない努力が必要です。
今回は、おいしさと品質、省エネを追求する横浜工場の取り組みと、
それを支える日立産機システム製品をご紹介します。

株式会社亀屋万年堂

株式会社亀屋万年堂

代表取締役社長 :
引地大介
創業 :
1938(昭和13)年12月
所在地 :
本社/東京都目黒区自由が丘1-15-12
横浜事業所(工場)/神奈川県横浜市都筑区折本町470
従業員数 :
230名
事業内容 :
和菓子の製造・販売、喫茶店の営業
http://www.navona.co.jp

夫婦で営む和菓子店から出発し、
銘菓『ナボナ』で全国ブランドに

 ロングセラーの銘菓『ナボナ』で知られる株式会社亀屋万年堂は、1938(昭和13)年に東京都目黒区自由が丘の地に創業しました。当初は創業者の引地末治様がご夫婦で営む、こじんまりとした町の和菓子店。戦時中は休業したものの、1946(昭和21)年に再開。砂糖を手に入れるにも苦労する時代でしたが、質の良い材料でおいしいお菓子をつくることにこだわり続けた結果、お客さまの支持も広がり、近隣エリアを中心に直営店が増えていきました。

 そんな地元に愛される店が大きな転機を迎えたのは、高度成長期真っ只中の1963(昭和38)年。「和菓子の感性を活かしながら、洋菓子の楽しさにあふれたお菓子を創れないものか」、との創業者の思いから、どら焼きの形をした洋菓子というまったく新しい発想のお菓子が生まれました。それがソフトカステラにクリームをサンドした『ナボナ』です。名前は創業者がヨーロッパ旅行で感動したイタリアのナヴォーナ広場からとりました。さらに1967(昭和42)年には、娘婿で野球選手だった國松彰様(現 取締役会長)と親交の深い王貞治選手のCM出演により、「ナボナは、お菓子のホームラン王です」のキャッチコピーとともにたちまち人気商品に。それまでの手づくりによる生産体制が追いつかなくなり、1969(昭和44)年、横浜市に大規模な工場を建設してライン生産をスタートします。その後、関東エリアの百貨店にも出店し、「東京土産」「東京銘菓」としての地位を確立。「お盆や正月に帰省される方が10折りも15折りも買われたりして、売り場も工場も大変な忙しさだったそうです」と、常務取締役の須田佳男様は当時の様子を紹介されます。

株式会社亀屋万年堂 常務取締役  須田佳男 様株式会社亀屋万年堂 常務取締役 須田佳男 様

 やがて『ナボナ』の成功は他の創作菓子の開発にもつながり、季節商品や注文商品を含めると取り扱い品目は常時70〜80、直営店舗は55店、取引先の店舗も270店と事業も拡大。2011(平成23)年には、経営を4代目の引地大介様が引き継ぎ、多彩なお菓子の数々は国内で広く愛されています。

温度・湿度の管理で、いつもの変わらぬ味を。
創業者の心を受け継ぐ横浜工場

亀屋万年堂製菓株式会社
生産部 部長  中島一三 様
亀屋万年堂製菓株式会社
生産部 部長 中島一三 様

 『ナボナ』をはじめ、同社の製造を担う主力の横浜工場は、敷地6,500u、1フロア1,700uの6階建て工場建屋と製あん工場によって構成されています。1階は配送センターと冷凍冷蔵庫、2階は資材倉庫、3階は『ナボナ』の製造ライン、4階は焼き菓子や生菓子の製造、5階は事務所、6階は倉庫です。

 「近代的な工場といっても、お菓子は人の手が触れることなくつくれるものではありません。特に当社は季節に合わせて少量多品種でつくりますし、手づくりにこだわった創業者の心を今も受け継いでいます」と語るのは、亀屋万年堂製菓株式会社 生産部部長の中島一三様。完全にオートメーション化された工場とは違い、人の温もり、手づくりの良さを大切にしています。

徹底したクリーンルームで製造
徹底したクリーンルームで製造

毎日、さまざまな種類のクリームがつくられている
毎日、さまざまな種類のクリームがつくられている

1時間に『ナボナ』7,000個分の皮を焼く製造ライン
1時間に『ナボナ』7,000個分の皮を焼く製造ライン

パッケージング後、金属探知機で異物などを
厳しくチェック
パッケージング後、金属探知機で異物などを
厳しくチェック

検査室で行われる徹底的な品質検査
検査室で行われる徹底的な品質検査

 横浜工場では、衛生管理はもちろん、おいしさへのこだわりも妥協を許しません。どの商品にも固定ファンがついているので、常に一定の味を保つことが重要です。「おだんごが“いつもより固い”と感じるだけで、お客さまはがっかりされます。あんの載せ方が違うと気付かれる方もいるほどです。あんの量は同じでも、ノズルとスピードとあんの固さの関係で、見た目が変わってしまうこともあります」と、菓子づくりの難しさを語る中島様。

 また、季節によって製造環境も変わるため、釜の具合・焼き色・水分量・皮のでき・クリームの仕上がりなどに繊細な注意を払い、温度や湿度を管理する必要があるといいます。特に『ナボナ』は、生地をこねる前の温度調整と、粉や油脂類と合わせた後の温度調整が重要で、ここが安定していないと生地がだれて規定の大きさにならず、食感にも影響します。そこで横浜工場では、2015年、全フロアの空調システム更新を決め、日立製の空調システム導入に踏み切りました。これで正確な温度管理により室温を安定化させることができ、併せて照明をLEDにし、省エネ化も進めました。さらに2016年には、工場で使う大量の水を蓄えておく受水槽や、水を汲み上げるポンプの更新にも着手しました。

変動が激しい水の使用量に対応する
分割型給水ポンプで省エネ・効率化を実現

亀屋万年堂製菓株式会社
生産部 技術推進課 マネージャー
古茶文雄 様 (右)
生産部 技術推進課
安斎豊和 様 (左)
亀屋万年堂製菓株式会社
生産部 技術推進課 マネージャー
古茶文雄 様 (右)
生産部 技術推進課
安斎豊和 様 (左)

 「水の供給は、お菓子づくりにはきわめて重要です。生あんは3回ほど水にさらすことで、不純物が取り除かれ、上品ですっきりした風味に仕上がるのです」と、中島様。「また容器の洗浄などにも大量の水が必要です」。

 受水槽の更新を検討された時、長年のお付き合いがある日立特約店の協立機電工業様から提案されたのが、給水ポンプの更新でした。これまでのポンプは20トン用2台による40トンの出力。横浜工場では、季節や時間帯によって水の使用量が大きく変動するので、従来のポンプは非効率だったのです。そこで新しく10トン用4台の日立産機システム製ポンプを設置。1階から6階まで汲み上げる水圧を確保しつつ、10〜40トンまでの給水が可能になりました。使用しない時はエネルギーを削減でき、1台故障しても3台が稼働できるのでリスク回避のメリットもあります。

台数制御により、省エネに加えリスク回避も実現
台数制御により、省エネに加えリスク回避も実現

 提案からわずかの期間で最適なポンプ設備を導入でき、4月の運転以降は空調更新、蛍光灯LED化などと合わせ、工場全体のエネルギー使用量8%減の省エネを実現できました。

 「従来、いつも同じ出力で水を供給していたので、もったいないなと考えていました。それが当工場の水需要に合わせて無駄なく効率的に稼働するというから、いいな、と思い採用させていただきました」と、中島様。工場開設時からコンプレッサーなど多くの日立製品を長年使っていただいていることから、「協立機電工業さんや日立産機システムさんには、日頃から困ったことがあったらすぐ来ていただいて助かっています。いろいろな提案を常にいただき、勉強になることが多いです」と、幅広いサポートにもご満足されているそうです。

製造機械など一日に何度も
洗浄が必要製造機械など一日に何度も
洗浄が必要

番重(ばんじゅう)の洗浄
番重(ばんじゅう)の洗浄

日立製圧縮機日立製圧縮機

 「今後は、“安全でおいしいお菓子”を追求していくことが一番ですが、さらに販路を広げたり新商品を開発することで、繁忙期と閑散期の変動をなくして売上を平準化したいと考えています。営業をバックアップする体制を整えるのも工場の役割です。また、季節商品などは朝出荷するためどうしても夜間の作業が必要になるので、新たな製法を開発して従業員の負担を減らすことも考えています」と、思いを語られる須田様。そんなご要望にお応えするために、日立産機システムは、省エネや効率化に貢献できるご提案をさせていただきたいと考えています。

お客さまのベストパートナーをめざして
日立産機システム 製品関係者 インタビュー