株式会社日立産機システム(取締役社長:青木 優和/以下、日立産機)は、このたび、株式会社日立製作所(執行役社長:中西 宏明/以下、日立)と共同で、モータの心臓部である鉄心に鉄基アモルファス金属*1を採用することで、レアアース(ネオジウム、ディスプロシウム)を含んだ磁石を用いない、11kW高効率永久磁石同期モータを開発しました。
日立産機は日立と、2008年にレアアースを用いないモータの基礎技術を確立していましたが、さらなる大容量化と高効率化を図るため、構造の最適化や鉄心の損失低減などの応用技術を開発し、中型容量クラスである11kWモータへの適用を実現しました。今回開発したモータは、従来モータの体格以下で国際電気標準会議(以下、IEC)の効率ガイドラインの最高水準であるIE4*2に適合するエネルギー効率約93%を達成しました。今後はさらに技術開発を進め、2014年度に製品化をする予定です。
本技術の一部は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「希少金属代替・削減技術実用化開発助成事業」を受けて開発したものです。
近年、地球温暖化などの環境問題に対する社会的な関心の高まりから、電気機器の効率を高め、エネルギー消費を抑制する技術が注目されています。モータにおいても、レアアースを含んだ磁石などを用いて効率化を図ってきましたが、資源枯渇の観点から、レアアースのリサイクルや他の材料への置き換えのニーズが高まっています。
このような背景から、日立産機は日立と、アモルファス金属を鉄心に採用し、レアアースを含んだ磁石を用いなくてもモータの効率を高めることができる、アキシャルギャップモータの基礎技術を開発し、2008年に小型容量クラスの150Wモータを試作しました。しかし、さらなる大容量化と高効率化を図るためには、高い強度のモータ構造やエネルギー損失を低減する材料を開発する必要がありました。
そこで、日立産機は日立と、磁力の低いフェライト磁石を有効活用できるアキシャルギャップモータ構造最適化技術とアモルファス金属のエネルギー低損失特性を引き出す積層型鉄心構造技術を開発し、レアアースを含んだ磁石を用いない産業用11kW高効率永久磁石同期モータを開発しました。開発した技術の特長は以下の通りです。
フェライト磁石の実装量を高めて磁石の磁気エネルギーを大幅に高められるダブルロータ型アキシャルギャップモータを採用するために、大きなトルクと遠心力に耐えられる高強度なステータ、ロータ構造を開発しました。これにより、産業用で利用される電力消費の大きい中型容量クラスの11kWモータの効率向上とレアアースを含んだ磁石を用いないモータの開発を実現しました。
従来モータに使用されている電磁鋼板の約1/10の低損失特性を有する鉄基アモルファス金属などの低損失材料をモータのステータ鉄心に利用する「積層型鉄心構造」、および、その製造技術を開発しました。これにより、従来鉄基アモルファス金属などの低損失材料の加工劣化性*3などを改善し低損失な鉄心を比較的容易に製造することが可能となりました。
フェライト磁石ロータやアモルファス積層型鉄心の各種特性を分析し、その特性を考慮したダブルロータ型アキシャルギャップモータ用の三次元磁界解析技術、三次元熱解析技術を開発し、11kW容量の産業用永久磁石同期モータを設計・試作評価を行ない、モータの高効率化を検証しました。その結果、モータの体格は従来のモータ以下としながらIECガイドラインで示されているIE4に適合する高効率化を実現しました。
アモルファス鉄心を用いたステータ
積層構造アモルファス鉄心
従来の11kW産業用誘導モータ(左)と開発モータ(右)
株式会社日立産機システム 研究開発センタ[担当:相馬]
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以上